「映画館の座席に一人でたどり着けなかった」「スーパーで牛乳と豆腐を見分けられなかった」「書類の小さな文字が読めずに、手続きを諦めた」——。
そんな経験、ありませんか?
視覚に障害があると、ほんの少しの外出や家事であっても、想像以上にエネルギーを使います。
しかし今、社会は確実に変わりつつあります。
制度を使えば、誰かが一緒に歩いてくれる。
アプリを使えば、あなたの目の代わりに世界を“語って”くれる。
そして、支援団体や事業所が力を合わせれば、「できない」を「できる」に変える仕組みを生み出せます。
私たち**一般社団法人With Blind**も、そんな未来を本気で形にしようとしています。
2026年1月からは、**同行援護・居宅介護・重度障害者就労支援事業**を開始し、「外出・生活・仕事をトータルで支える」新しい挑戦を始めます。
この記事では、視覚障害のある方やそのご家族・支援者の方に向けて、
* 外出や自宅で使える支援制度・サービス
* 同行援護や居宅介護の料金と上限額
* 職場で使える「重度障害者就労支援事業」
* 生活を変えるアプリ・テクノロジーの紹介
* With Blindが目指す新しい支援のかたち
を、具体的にお伝えします。
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## 1. 視覚障害があっても「できる」を増やせる時代に
見えない・見えにくいことは、決して「何もできない」ということではありません。
必要なのは、**適切な支援と、使える情報**です。
私たちは、視覚障害者とその家族、そして支援者が「制度とテクノロジーを味方につける」ことで、生活の選択肢を増やせるように活動しています。
外出や家事、仕事や学び——それぞれの場面で“できる”を一つずつ増やす。
それが、With Blindの使命です。
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## 2. 外出を支える「同行援護サービス」
同行援護とは、視覚障害のある方が安心して外出できるよう、**同行援護従業者(ガイドヘルパー)**が移動や情報提供、代読などを行う福祉制度です。
目的は、移動の補助だけではなく、「社会とつながる自由を支えること」です。
### どんな場面で使える?
* 駅や役所、病院などへの移動
* 買い物・飲食・観光などの外出
* 映画館や美術館など趣味活動
* ボランティア・勉強会・イベントへの参加
### 申請から利用までの流れ
1. 市区町村の福祉課で「障害福祉サービス受給者証」を取得
2. 同行援護を申請
3. 事業所と契約し、支援計画を作成
4. 利用開始
### 利用料金と自己負担の仕組み
同行援護の費用は、**利用時間・支援区分・地域区分**によって異なります。
利用者は原則1割を負担し、実際の支払い額は**1時間あたり200〜500円前後**が目安です。
* 支援区分3の方:区分0〜2の方より約20%高
* 支援区分4〜6の方:区分1〜2の方より約40%高
* 短時間利用(1時間単位)は割高傾向
* 東京都23区(1級地)は約11%割増
また、**盲ろう者向け支援**には基本料金の25%加算がつきます。
さらに、**早朝・夜間・深夜**には時間帯割増が適用されます(早朝・夜間25%、深夜50%)。
### 月ごとの上限負担額
| 区分 | 上限負担月額 |
| ———- | ——- |
| 生活保護世帯 | 0円 |
| 市町村民税非課税世帯 | 0円 |
| 所得割16万円未満 | 9,300円 |
| 上記以外 | 37,200円 |
この「上限月額」を超える分は自己負担になりません。
ただし、支給時間を超えて利用した場合は全額負担となる場合があるため、利用計画を確認することが大切です。
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## 3. 家の中を支える「居宅介護(家事援助)」
「料理がうまくいかない」「洗濯物の色分けができない」「郵便物の内容が読めない」——そんな時、頼れるのが**居宅介護サービス**です。
支援内容の例:
* 掃除・洗濯・調理・買い物などの家事
* 家電操作・郵便物の確認・整頓
* 生活空間の安全確認
* 視覚的な情報(書類・ラベルなど)の説明
利用料は同行援護と同様に**原則1割負担**。
視覚的確認や説明が必要な家庭では、民間家事代行よりも制度利用の方が現実的です。
With Blindでは、居宅支援と外出支援を連携させ、「家の中も、外出先もサポートが切れない」仕組みを構築しています。
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## 4. 職場での支援「重度障害者就労支援事業」
働きたいけれど、通勤や職場内で支援が必要——そんな人を支えるのが、**重度障害者就労支援事業**です。
2020年度から始まった制度で、同行援護や重度訪問介護を**就労時にも活用できる**仕組みです。
対象は、視覚や聴覚などの重い障害で単独通勤が難しい方や、職場での情報支援を必要とする方。
この制度により、ガイドヘルパーが通勤経路や職場内の移動、会議・資料確認などをサポートできます。
With Blindは今後、この制度を活かして「働く同行援護」を実現するモデルを広げていきます。
外出・生活・就労を切れ目なく支援する——それが私たちの目指す社会のかたちです。
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## 5. 情報を広げるテクノロジーとアプリ
視覚障害があっても、アプリやAIを使えば「自分の目で世界を見る感覚」を取り戻すことができます。
ここでは、生活を支える人気のツールを紹介します。
### 外出を助けるアプリ
* **Eye Navi(アイナビ)**:AIが周囲を解析し、音声でナビゲート。視覚障害者の歩行を支援。
* **Be My Eyes**:世界中のボランティアと映像通話でつながり、目の代わりに見てもらえる無料アプリ。
* **Google マップ(音声ナビ対応)**:視覚障害者向けの音声案内モードを搭載。屋内ナビも進化中。
### 情報収集・読書支援
* **Seeing AI(iOS)**:文字・人物・色などをAIが認識し、音声で読み上げ。
* **OrCam MyEye**:メガネ型AIカメラが本やメニューの文字を読み上げ。
* **よむべえ/クリアビュー**:据え置き型の拡大読書器。紙の本を拡大+音声化。
### 日常生活をサポート
* **スマートスピーカー(Alexa/Google Home)**:音声でニュース・天気・タイマーを操作。
* **Color Identifier**:物体の色を音声で読み上げ。
* **Aira(アイラ)**:有料サービス。専門エージェントがリアルタイムで映像を見ながら支援。
これらのツールは「一人で外出する」「情報を得る」「暮らしを整える」力を取り戻すための心強い味方です。
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## 6. With Blindの新しい挑戦
With Blindは、外出・生活・就労の3領域をつなげ、視覚障害者がトータルに支援を受けられる事業所を立ち上げます。
* **外出支援(同行援護)**:通院・買い物・趣味活動などに安心して出かけられる環境を。
* **生活支援(居宅介護・家事援助)**:安全で快適な暮らしをサポート。
* **就労支援(重度障害者就労支援事業)**:通勤や職場内での支援を実現。
加えて、**支援スタッフの育成と研修**にも力を入れています。
利用者・家族・支援者が共に成長できる環境をつくり、福祉を「一方的に提供するもの」から「共に創るもの」へ変えていきます。
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## 7. スタッフ募集と想い
With Blindでは現在、同行援護や居宅介護に関わるスタッフを募集しています。
資格をお持ちの方はもちろん、福祉分野に興味のある未経験の方も歓迎です。
働く時間や形態は柔軟に調整でき、短時間勤務や副業型の参加も可能です。
「視覚障害がある人の生活を支えたい」「福祉をもっと身近なものにしたい」——
そんな想いを持つ方は、ぜひ一度お話ししましょう。
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## 8. まとめ——制度とテクノロジーで、見えない壁を越える
同行援護や居宅介護、そして重度障害者就労支援事業。
これらの制度を正しく使えば、視覚障害があっても「行ける場所」「できる仕事」「暮らせる形」は広がります。
そして、AIやアプリを味方にすれば、見えないことが不利ではなく、「新しい見方」に変わる時代が来ています。
With Blindは、制度とテクノロジーの両輪で、あなたの「できる」を増やすお手伝いをしていきます。