「映画館の座席に一人でたどり着けなかった」「スーパーで牛乳とオレンジジュースを間違えてしまった」「書類の小さな文字が読めずに、手続きを諦めた」——そんな悔しい経験、ありませんか?
もちろん、時間をかければ一人でできることもあります。でも、「今すぐこれが知りたい」「誰かの目があれば、もっと早く、もっと正確にできるのに」と感じる瞬間は誰にでもあります。人に頼りたいときに、気軽に専門のサポートを依頼できる選択肢があるだけで、心の負担はぐっと軽くなります。
社会は確実に変わっています。制度を使えば、誰かが一緒に歩いてくれる。アプリを使えば、あなたの目の代わりに世界を“語って”くれる。支援団体が力を合わせれば、「できない」を「できる」に変える仕組みはもっと増やせます。私たち一般社団法人With Blindも、そんな未来を本気で形にしようとしています。
この記事では、視覚に障害のある方やそのご家族・支援者に向けて、制度とテクノロジーを味方にし、生活の選択肢を広げるための具体的な方法を、2025年の最新情報とともにお届けします。
この記事を読めば、これが分かります
- 外出・生活・仕事の場面で使える具体的な支援制度・サービス
- 同行援護・居宅介護の料金目安と自己負担の上限額
- 「働きたい」を支える重度障害者等就労支援事業とは何か
- 生活が劇的に変わる、厳選アプリ・テクノロジー
- With Blindが目指す「トータルサポート」という新しい形
知るだけで世界が広がる!視覚障害者向け便利サービス6選
あなたの「目」となり、日常のさまざまな場面で力を貸してくれる心強いアプリとテクノロジーを6つ厳選しました。各サービスの便利ポイントを最初に整理しているので、用途に合わせて選べます。
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Be My Eyes(ビー・マイ・アイズ):世界中のボランティアがあなたの目に
- 便利ポイント:スマホのカメラ越しにボランティアが色・ラベル・賞味期限・文字を即時確認。買い物や衣類選びなど、ちょっとした判別がすぐ解決。
- ▶ Be My Eyes(App Store)
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Seeing AI(シーイング エーアイ):かざすだけで世界を読み解く万能AIアプリ
- 便利ポイント:Microsoft開発の無料アプリ。短いテキストの即時読み上げ、書類スキャン(ガイド音付き)、バーコード、人物・風景説明までこれ一つ。
- ▶ Seeing AI(App Store)
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UDCast(ユーディーキャスト):映画の音声ガイドを手元で
- 便利ポイント:上映音声を認識し作品に同期。登場人物の表情・動き、背景描写など映像情報を音声で補い、映画体験を拡張。
- ▶ UDCast(App Store)
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VoiceOver / TalkBack:スマホ操作の必需品(標準機能)
- 便利ポイント:画面上の文字・ボタン・画像の説明を音声で案内。ジェスチャーで操作でき、すべてのアプリ利用の基盤に。
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OrCam MyEye / Envision Glasses:ハンズフリーで情報を得るメガネ型端末
- 便利ポイント:メガネのフレームに取り付ける小型AIカメラが文字や顔・物体を認識し読み上げ。両手が自由になり、買い物や調理、読書、会話で活躍。
- ▶ OrCam MyEye 公式サイト / ▶ Envision Glasses 公式サイト
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Eye Navi / Google マップ:一人歩きを支えるナビゲーション
- 便利ポイント(Eye Navi):AIが歩行環境を解析し、進行方向・施設・歩行者信号などを音声で案内。視覚障害者に特化した歩行支援。
- 便利ポイント(Google マップ):経路案内・公共交通・屋内地図・音声ナビが充実。口コミや写真も確認でき、初めての場所のイメージを掴みやすい。
- ▶ Eye Navi 公式サイト
▶ Google マップ(App Store)
このほかにも便利なアプリは多数あります。視覚障害当事者によるレビューサイト「Vi-log(アプリレビュー)」で、実際の使用感や評価をチェックしてみてください。
公的制度を賢く使う【外出編】— 同行援護サービス
同行援護は、視覚障害のある方が安心して外出できるよう、専門のガイドヘルパーが移動支援・情報提供・代読・代筆などを行う福祉制度です。目的は単なる移動補助ではなく、社会とつながる自由を支えることにあります。
どんな場面で使える?
- 公的な用事: 役所での手続き、病院への通院
- 日常の買い物: スーパーやデパートでのショッピング
- 余暇活動: 映画鑑賞、美術館めぐり、友人との食事
- 社会参加: ボランティア活動や各種イベントへの参加
【完全ガイド】申請から利用までの4ステップ
- 受給者証の取得: お住まいの市区町村の福祉課で「障害福祉サービス受給者証」を申請・取得。
- 同行援護の申請: 同じ窓口で、同行援護の利用を申請。
- 事業所と契約: 利用したい事業所(例:With Blind)を選び契約。必要な支援を整理した支援計画を作成。
- 利用開始: 計画に沿って、ガイドヘルパーとの外出支援を開始。
気になる料金は?自己負担の仕組み
費用は国と自治体が9割以上を負担するため、原則1割負担で利用できます。実際の自己負担は1時間あたり200〜500円前後が目安(利用時間・支援区分・地域で変動)。早朝・夜間・深夜には時間帯割増(25〜50%)が適用されます。
| 区分 | 上限負担月額 |
|---|---|
| 生活保護世帯 | 0円 |
| 市町村民税非課税世帯 | 0円 |
| 所得割16万円未満 | 9,300円 |
| 上記以外 | 37,200円 |
※ 計画された支給時間の範囲外での利用や、制度の対象外サービスを組み合わせた場合は全額自己負担となることがあります。契約時に必ず確認しましょう。
公的制度を賢く使う【自宅編】— 居宅介護(家事援助)
「郵便物の内容が読めない」「調理中の火加減が不安」「洗濯物の色分けが難しい」——そんな家の中の“困りごと”を支えるのが居宅介護(家事援助)です。ホームヘルパーが自宅を訪問し、視覚的な確認が必要な家事を中心に、自立と安全を守るための支援を行います。
- 掃除・洗濯・調理・買い物などの家事
- 郵便物や書類の内容確認と代読
- 家電の操作説明や生活空間の安全確認
利用料は同行援護と同様に原則1割負担で、所得に応じた月ごとの上限額も適用。民間の家事代行に比べて費用負担を抑えつつ、必要最小限の支援に絞って継続利用しやすいのが特長です。
居宅介護(家事援助)と民間の家事代行の違い
居宅介護は、障害が理由で日常生活の一部に援助が必要な方を対象に、専門のヘルパーが自立を支える目的で行う福祉サービスです。対して民間の家事代行は、お金を払えば家事全般を代行してくれる商業サービスで、不在中の作業に対応する事業者もあります。
| 項目 | 居宅介護(家事援助) | 民間の家事代行 |
|---|---|---|
| 目的 | 障害による困難の補完(自立支援・安全確保) | 家事のアウトソース(時間・労力の節約) |
| 対象範囲 | 生活維持に必要な家事に限定 | 依頼に応じて広範囲に対応(整理・大掃除・作り置き等) |
| 在宅の要否 | 原則、本人在宅で実施 | 不在中の作業可(鍵預かり等) |
| 設計・運用 | アセスメント→支援計画に基づき実施 | メニュー・契約内容で柔軟に設定 |
| 費用 | 原則1割負担+月額上限あり | 全額自己負担(時間単価×回数等) |
| 専門性・記録 | 福祉専門職が実施。訪問記録・守秘を徹底 | 資格不要が一般的。報告は任意 |
かんたんに言うと
- 居宅介護:「必要な部分を一緒に解決し、自立を支える支援」
- 家事代行:「家事を代わりにしてもらう便利なサービス」
公的制度を賢く使う【仕事編】— 重度障害者等就労支援
重度障害者等就労支援は、これまで私生活で主に利用されてきた同行援護などを、通勤や就労の場面でも活用できるようにした仕組みです。ガイドヘルパーが通勤に同行したり、職場での書類確認や会議での情報支援を行ったりできるため、「働きたくても働けなかった」人の選択肢が大きく広がります。
With Blindの新しい挑戦:外出・生活・仕事をトータルサポート
私たち一般社団法人With Blindは、外出(同行援護)・生活(居宅介護)・仕事(重度障害者等就労支援)の3領域をつなぎ、一つの窓口で切れ目なく支援する体制を目指しています。2026年1月から順次、連携した仕組みづくりを進め、あなたの人生をトータルで支えるパートナーになることを宣言します。
まとめ:制度とテクノロジーで「見えない壁」を越えよう
同行援護、居宅介護、重度障害者等就労支援。これらの制度を正しく使えば、視覚に障害があっても「行ける場所」「できる仕事」「望む暮らし」は確実に広がります。さらに、歩行支援アプリや読み上げ技術などのアクセシビリティ・テクノロジーを味方にすれば、見えないことが不利ではなく、新しい“見方”へと変わります。
この記事があなたの「できる」を増やす一歩になれば幸いです。With Blindは、制度とテクノロジーの両輪で、あなたの挑戦を全力で支えます。


