「この資料、最後に見た目だけ確認してもらえませんか?」
文章は自分で書けた。数字も読み上げで確認した。でも、印刷すると表が途中で切れていないか、見出しだけが次のページに残っていないかが気になる。そんな場面で、同僚の手が空くのを待ったことはありませんか。
こんにちは。With Blindのよーすけです。視覚障害と仕事の話をすると、「何の職種なら働けるか」に話が進みがちです。でも、僕はまず、一日のどの作業で止まっているのかを考えたいんです。資料を読む、転記する、形を整える。その小さな工程を変えられたら、同じ職場でも担当できる範囲が変わるかもしれません。
この記事では、With Blindが公開している講座実績と、そこから考えられる仕事の組み立て方を紹介します。会話は疑問を説明するための架空のやり取りです。実践記録にある事例と、これから試せる想定例は分けてお伝えします。
仕事が止まる場所を、能力の問題だけにしない
文章を書くのは嫌いじゃないんです。でも、資料を仕上げるときに誰かへ頼むことが多くて。事務の仕事に向いていないのかな、と考えてしまいます。

「文章を考える」と「印刷の見た目を確かめる」は別の作業ですよね。後者で困るからといって、前者の力までなくなるわけではありません。まず、どこに確認が必要かを分けてみましょう。
たとえばイベントの案内を作るなら、開催条件を確認し、必要な項目を選び、参加者に伝わる言葉を書き、文書へ配置し、送る前に点検します。ひとまとめに「案内作成」と呼ぶと、どこが得意でどこに道具が必要なのかが見えません。
スクリーンリーダーは画面の文字や操作項目を音声で伝えるソフトです。JAWSやNVDAを使えば、キーボードで文章を読み、ファイルを扱える場面が増えます。一方、画像だけの資料、名前のないボタン、色だけで示された注意点などには壁が残ります。読み上げに時間がかかることと、内容を理解できないことも同じではありません。
そこでAIが候補になります。まず情報を整理させ、要点や変更点を言葉で説明させる。自分がすべての画面操作をする前に、確認できる形へ寄せる使い方です。ただし、AIが説明した内容と元の資料が一致しているかは別に確かめます。

「やり方を聞く」から、作業の途中まで頼むへ
ChatGPTなら質問したことがあります。WorkとかCodexという名前も見ますが、全部覚えないと使えませんか?

最初から全部を覚える必要はありません。Chatは相談や短い下書き、Workはまとまった作業を進めてもらう入口、Codexは開発の作業を見やすくした入口、と捉えると始めやすいです。機能には重なる部分もあります。
ChatGPTは、普段の言葉で質問や依頼ができるAIです。Workは、必要な情報を集めたり、ファイルを作ったりして、確認できる成果物まで仕事を進めてもらう使い方です。Codexはソフトウェア開発に向いた画面や機能を持ち、利用できる環境では文書や調査の作業にも使えます。
質問に答えるだけでなく、複数の作業を順番に進めるAIを、AIエージェントと呼びます。たとえば「案内文の構成を相談する」と「この条件で案内文のファイルを作り、修正点も報告してもらう」では、任せる範囲が違います。
OpenAIの公式案内でも、Chat、Work、Codexの使い分けが説明されています。機能はプラン、利用環境、設定などで変わるので、同じ依頼が誰の環境でも同じように実行できるとは限りません。
ChatGPTデスクトップアプリは、パソコンに入れて使うアプリです。JAWSやNVDAで依頼文を入力し、返ってきた説明を読むところから始められます。アプリ内でボタンや編集欄を読み上げられる場面があっても、すべての操作が完全に使いやすいと保証されているわけではありません。まず、短い文章で往復できるかを自分の環境で試します。
With Blindの実践で変わったこと、残ったこと
With Blindの生成AI講座の開催報告では、行政文書を使ったWord資料の作成、PDFの要約、Excelのレイアウト調整などを扱ったことが確認できます。画面の操作方法を知るだけでなく、実際に資料を作るところへ進んだ例です。
資料が作れたということは、見た目の確認も全部AIへ任せられたんですか?

そこは分けたいです。With Blindの半年間の実践では、履歴書の右端が切れたり、写真の形が崩れたりした例も残っています。文章を作れたことと、提出できる見た目になったことは、別に確認が必要でした。
視覚障害者9人の6か月の実践記録には、履歴書作成で用紙の向きや改ページが合わなかったことも書かれています。この記事で、よーすけ本人がその失敗をしたという体験談には置き換えません。受講生の実践から共有された、確認工程の課題です。
ここから考えられる使い方が、講座案内の資料作成です。日程、対象、持ち物をAIに整理させ、人が原文と照合する。次に、指定したテンプレートへ入れてもらい、PDFにした結果を確認する。この流れはWith Blindの業務を想定した例で、現時点の運用が完全自動化されているという意味ではありません。
| 工程 | AIへ頼む候補 | 人が確かめる点 |
|---|---|---|
| 情報整理 | 原文から必要項目を抽出 | 日程や条件の抜け |
| 文章作成 | 案内文を下書き | 相手に合う説明 |
| ファイル編集 | 指定の形に整える | 数字と変更箇所 |
| 提出前 | 点検項目をまとめる | PDF・印刷・送付先 |
この表で伝えたいのは、AIを入れても「確認」は消えないということです。確認する材料と順序を整えると、誰かへ依頼する範囲も具体的になります。たとえば「全部見てください」から「2ページ目の表が切れていないか確認してください」へ変えられます。
こうした作業の分け方を自分の業務で試したい方へ、With BlindではAI活用講座・応用編を案内しています。基本のキー操作を一つずつ習う講座ではなく、目的や条件を伝え、結果を確認して仕上げる実践が中心です。
人に頼むことを、悪いことにしなくていい
AIを使えるようになったら、人に頼らない方がいいんでしょうか。

僕はそうは思いません。AIで進められる部分が増えても、必要な支援を頼む権利までなくなるわけではないです。自分で決めたい部分と、協力してほしい部分を整理できるといいですね。
AIが使えるかどうかだけで、職場の配慮を減らす話にはしたくありません。たとえば社内システムに読み上げられないボタンがあるなら、AIへ画面操作を任せる方法だけでなく、システムの改善や別の手段も話し合う必要があります。
厚生労働省の合理的配慮の案内は、職場での障害に応じた配慮を考えるための資料です。具体的な対応は本人と職場の状況に応じて相談します。AIの利用を、本人だけに追加の努力を求める理由にしないことが大切です。
家族や支援者も、「AIを覚えれば一人でできるよ」と急がせる前に、「今はどの作業が待ち時間になっている?」と聞いてみてください。本人が困っていない工程を勝手に変える必要はありません。すでに使いやすい手順があるなら、それを残して組み合わせます。
最初に変えるのは、毎日つまずく小さな一工程
何から試すのがいいですか。仕事の資料をいきなり渡すのは不安です。

架空の案内文や、公開されている資料を使うと始めやすいです。「足りない項目を挙げて」「日付を一覧にして」くらいの、小さな依頼で十分ですよ。
練習用に、架空のイベントの日時と場所だけを書いてみます。AIへ「参加者へ送る案内の下書きを作って。情報がない項目は作り足さず、未確認と書いて」と頼みます。返答に持ち物や参加費が勝手に追加されていないかを見ると、確認の感覚がつかめます。
次は「変更した箇所を番号付きで説明して」と頼みます。スクリーンリーダーで全文を読み直す前に、どこが変わったかを把握できます。元の文を残しておけば、違う方向へ進んだときも戻れます。
本番の顧客情報、相談記録、勤務表を使う前には、勤務先の利用ルールを確認します。名前を消しても、内容から人を特定できることがあります。最初の練習は、架空のデータで進める方が準備しやすいです。

便利さを測るときは、作成時間だけを見ないでください。確認や修正に何分かかったか、疲れ方はどうか、次も自分で再現できるかまで含めます。AIに作らせるのが速くても、確認に倍の時間がかかるなら、依頼する範囲を小さくする方が合うかもしれません。
自分でも試してみたい方へ
ChatGPTは使っているけれど、仕事に持ち込むところで止まっています。講座では何を扱うんですか?

今回の応用編は、業務を整理し、入力フォームを作り、受付後のメールなどの機能を加え、複数の資料から文書を作る全4回です。自分の仕事で困っている工程を一つ持ってきてもらうと、考えやすいと思います。
2026年11月の月曜日コースは2日・9日・16日・23日、水曜日コースは4日・11日・18日・25日です。各回20時から21時30分、オンラインで開催します。受講料は49,500円(税込)で、受講期間中のChatGPT Business利用環境が含まれます。
WindowsをJAWSまたはNVDAで操作できることなどの受講条件があります。Officeは自分の所有するものを使い、アプリのインストールやGoogleドライブ・スプレッドシートの基本操作も自力で行える必要があります。各コースの申込締切は初回の7日前23時59分、定員に達した場合はその前に締め切られます。
講座内容・準備するもの・申込方法を確認するから詳細をご覧ください。参加できる環境か迷う場合は、同じページの20分無料相談も利用できます。まずは今日、練習用の文章一つで「この工程を手伝って」と頼んでみるところからで構いません。
情報確認日:2026年10月3日。AIの機能や操作画面、講座の募集状況は変わる場合があります。開催条件や申込み前の注意事項は講座ページでご確認ください。


