遮光眼鏡をかけると、まぶしさが軽くなり、外出や読書がしやすくなる人がいます。一方で、「高価そう」「補装具として申請できるのか」「先に買ってしまってよいのか」と迷う方も多いでしょう。
結論から言うと、遮光眼鏡は補装具費支給制度の対象になる可能性があります。ただし、診断名だけで自動的に決まる制度ではありません。羞明の状態、治療の状況、眼科医による選定・処方、自治体の判定がそろって初めて支給が決まります。
この記事では、厚生労働省の取扱指針をもとに、対象条件、申請の順番、費用、必要書類、断られやすいケース、眼科や自治体への伝え方まで、実際に動くための情報をまとめます。制度は自治体によって細部が違うため、最後は必ずお住まいの市区町村で確認してください。
遮光眼鏡とは?普通のサングラスとの違い
遮光眼鏡は、まぶしさを感じやすい人のために、特定の波長の光を抑えるレンズです。単に色が濃いレンズではありません。光の通し方を示す「分光透過率曲線」が公開され、まぶしさを減らしながら必要な見え方を保てるよう設計されています。
普通のサングラスは、ファッションや紫外線対策を目的に選ぶことが多い製品です。遮光眼鏡は、羞明による生活上の困難を減らす医療・福祉的な補装具です。色の好みだけで決めず、眼科で見え方を確認しながら選びます。
遮光眼鏡には、前掛け式、眼鏡フレームに組み込むタイプ、度付きレンズと組み合わせるタイプなどがあります。屋外用と室内用で必要な濃さや色が違うこともあります。
補装具として認められる主な条件
厚生労働省の「補装具費支給事務取扱指針」では、遮光用眼鏡について、次の考え方が示されています。
- 羞明、つまり強いまぶしさがあること
- 羞明を軽くするために、遮光眼鏡より優先すべき治療法がないこと
- 指定された要件を満たす眼科医が選定し、処方すること
- 装用により、まぶしさや見え方の改善が確認できること
効果の確認では、光による白く飛ぶ感じが減るか、文字や物の読み取りがしやすくなるか、涙や不快感が軽くなるか、暗い場所へ移ったときの順応が楽になるかなどが見られます。「少し色がついて落ち着く」という感想だけでなく、生活場面で何ができるようになったかを伝えることが大切です。
どのような人が対象になり得る?
網膜色素変性症、錐体ジストロフィー、無虹彩症、白皮症、角膜や水晶体の疾患、手術後など、まぶしさが強く出る病気や状態で検討されることがあります。ただし、病名の一覧に当てはまれば必ず支給されるわけではありません。
同じ病気でも、羞明の強さ、視野、視力、治療の状況、実際の生活上の困りごとは異なります。反対に、病名が遮光眼鏡の案内で見つからなくても、強い羞明があり、眼科医が必要と判断すれば相談する価値があります。
通常は身体障害者手帳の視覚障害に該当していることが前提です。一方、指定難病の患者は、手帳がなくても対象になり得る扱いがあります。難病の証明方法や必要書類は自治体に確認してください。
申請前に知っておきたい大原則
購入してから申請しない
補装具費支給制度は、原則として申請、判定、支給決定の後に購入する仕組みです。先に自費で購入すると、あとから補助を受けられないことがあります。試着や相談は先に行って構いませんが、注文や支払いの前に自治体へ連絡しましょう。
自治体が支給可否を決める
眼科医が「必要」と判断しても、それだけで支給決定にはなりません。申請先は、住民票のある市区町村の障害福祉担当窓口です。自治体は、医師の意見、処方、見積書、手帳や難病の確認、所得区分などを確認して決定します。
制度の基準額と実際の価格は違う
補装具には種目ごとの基準額があります。基準額を超える高機能レンズ、特殊なフレーム、オプションなどを選ぶと、差額が自己負担になる場合があります。見積書を見ながら、基準内の部分と追加料金を分けて説明してもらいましょう。
申請から受け取りまでの流れ
- 困りごとをメモする。晴れた屋外、白い床、車のヘッドライト、教室の窓際、スマートフォンの画面など、困る場所と時間を書きます。
- 自治体へ事前相談する。「遮光用眼鏡を補装具として申請したい」と伝え、対象要件、指定医、指定業者、必要書類、基準額を確認します。
- 眼科を受診する。羞明の原因、治療の優先順位、遮光眼鏡の必要性を相談します。ロービジョン外来があれば、見え方の評価や試着を受けやすいことがあります。
- レンズを試す。屋外と室内、文字、段差、白い壁など、実際に困る場面で比較します。見え方が良くなった場面をメモします。
- 処方箋や医師の意見書を準備する。自治体が指定する様式がある場合は、その用紙を先に受け取って眼科へ持参します。
- 補装具業者から見積書を取る。登録された取扱業者に、レンズ、フレーム、度数、前掛け式かどうか、基準額との差額を確認します。
- 市区町村へ申請する。申請書、手帳または難病関係書類、医師の意見書や処方、見積書、本人確認書類などを提出します。
- 判定と支給決定を待つ。自治体によっては更生相談所などの判定が必要です。遮光眼鏡のように書類で確認できる場合、自治体が直接判断する扱いもあります。
- 決定通知を受けてから注文する。支給券や決定通知の内容を業者に伝え、レンズを製作します。
- フィッティングと受け取り。ずれ、重さ、視界の狭さ、室内での暗さを確認し、調整方法と修理窓口を聞いておきます。
自治体によって順番や書類名が変わります。迷ったら、眼科へ行く前に窓口へ電話し、「申請前に試着してよいか」「意見書の様式はあるか」を聞くと手戻りを減らせます。
必要になりやすい書類
- 補装具費支給申請書
- 身体障害者手帳の写し、または指定難病を確認できる書類
- 指定様式の医師意見書・処方箋
- 登録業者の見積書
- 本人確認書類、個人番号を確認できる書類
- 所得や市町村民税の確認に必要な書類
- 代理申請の場合の委任状など
自治体がマイナンバー連携で確認できる項目は、提出を省略できることがあります。必要書類は自治体ごとに異なるため、ホームページの一覧だけで判断せず、窓口に確認してください。
費用はいくら?自己負担の考え方
補装具費支給制度の自己負担は、原則として基準額の1割です。ただし、所得区分による月額上限があります。生活保護世帯と市町村民税非課税世帯は負担が0円になる扱いがあり、一般の世帯には月額37,200円の上限が示されています。高所得世帯は制度の対象外となる場合があります。
ここでいう1割は、実際に選んだ製品の販売価格すべてに機械的に掛ける金額ではありません。基準額を超えた分、対象外のオプション、制度外の加工費などは別に請求されることがあります。
例えば、基準額内の本体が22,400円と案内されている場合、単純計算では1割相当が2,240円です。しかし、これは自治体の最新基準や所得区分、見積内容を確認する前の目安にすぎません。基準額は改定されることがあるため、必ず現在の見積書で確認してください。
子どもの申請では、世帯の所得の見方が変わることがあります。成人と同じ計算にならない自治体もあるため、保護者は「誰の所得で判定するか」も窓口で聞いておくと安心です。
1本で足りない?屋外用と室内用を分ける考え方
遮光眼鏡は、使う場所によって適したレンズが違います。屋外の強い日差しには濃いレンズが役立っても、室内では暗く感じることがあります。逆に、室内で見やすい色では、夏の道路や車のライトへの対策が足りないことがあります。
厚生労働省の視覚障害者向け資料では、屋内用と屋外用など、用途が明確に違い、日常生活上必要と説明できる場合に複数個を検討する考え方が示されています。2本ほしいから認められるという意味ではありません。使う場所、目的、持ち替えの必要性を医師と自治体に具体的に伝えます。
度付きレンズや追加料金はどうなる?
視力矯正が必要な人は、遮光機能と度数を組み合わせたレンズを検討します。視野障害が中心で視力の条件に当てはまらない場合、度数部分が制度の対象外となり、自費扱いになる可能性があります。レンズのどの機能が対象で、どの部分が追加負担かを、業者に書面で分けてもらいましょう。
薄型加工、遠近両用、カラーの濃さ、特殊なコーティング、ブランドフレームなどは、基準額を超えることがあります。必要な機能と、好みで追加する機能を分けて考えると、費用を見通しやすくなります。
当事者が感じやすい変化と伝え方
遮光眼鏡を試した当事者からは、「白い床の反射で足元が見えにくかったが、段差を探しやすくなった」「店内に入った直後のまぶしさが和らぎ、立ち止まる時間が短くなった」「スマートフォンの白い画面を見続けても疲れにくい」といった声があります。
一方で、「濃い色なら何でも楽になるわけではない」「夕方や室内では暗く感じる」「色によって信号や人の顔の見え方が変わる」という声もあります。試着は短時間で終わらせず、普段の生活に近い場所で行いましょう。
医師には、次のように伝えると具体的です。
晴れた日は路面が白く飛び、信号の位置を探すのに時間がかかります。白い紙を読むと目が痛くなります。遮光レンズを試すと、文字の輪郭と歩道の境目が分かりやすくなりました。屋外では使えますが、室内では暗く感じます。
「まぶしい」だけで終わらせず、場所、時間、見えにくい対象、試着後の変化を伝えることが、適切な処方につながります。
申請が止まりやすいケースと対策
先に購入してしまった
制度は事前申請が原則です。購入前に窓口へ相談し、決定通知が出るまで注文を待ちます。
普通のサングラスを持参した
一般のサングラスは、遮光眼鏡の基準や分光透過率の要件を満たさないことがあります。補装具の登録業者で、対象となる製品を選びます。
効果を説明できない
試着した場所、見えた文字、歩けた距離、涙や痛みの変化をメモします。家族や同行者の観察も補助情報になります。
治療や眼鏡の調整が先と判断された
白内障など、先に治療を検討すべき原因がある場合は、治療後の見え方を確認します。眼鏡の度数が合っていない場合も、まず調整します。
必要書類や医師の要件が違った
自治体指定の様式や医師の要件があります。自分で用意した診断書だけでは足りないことがあるため、先に窓口で確認します。
電話で使える確認文
自治体には、次のように聞けます。
視覚障害があり、羞明のため遮光眼鏡を検討しています。補装具費支給制度の対象条件、申請前の試着の可否、指定医と登録業者、必要書類、基準額、自己負担、決定までの期間を教えてください。度付きレンズと屋外用・室内用の扱いも確認したいです。
眼科では、「補装具として申請を考えている」と最初に伝えます。一般の眼鏡処方と補装具の意見書では、必要な記載が違うことがあります。
よくある質問
身体障害者手帳がなければ絶対に無理ですか?
通常は視覚障害の手帳が前提ですが、指定難病の患者は手帳がなくても対象になり得ます。難病の対象や証明書類は自治体に確認してください。
Amazonなどで買った遮光眼鏡は申請できますか?
通信販売で先に購入した商品を、あとから補装具費の対象にするのは難しい場合があります。商品名だけでは、基準に合うか、指定業者から購入できるか、医師の処方と一致するかを確認できません。制度利用を考えるなら、先に眼科と自治体へ相談してください。
更新や壊れたときの修理は?
耐用年数、再支給、修理の扱いは、部品や自治体の基準で変わります。破損したら捨てずに、まず業者と自治体へ連絡します。見え方が変わった場合は、再度の眼科評価が必要になることがあります。
子どもでも申請できますか?
子どもも対象になり得ます。成長で度数や顔幅が変わるため、フィッティングと更新時期を確認します。学校で使う場合は、担任や養護教諭に、屋外用・室内用の使い分けと保管場所を共有すると安全です。
最後に:一人で判断せず、購入前に三者でつなぐ
遮光眼鏡の申請は、病名だけで決まるものではありません。本人がどの場面で困っているか、眼科医がどのレンズを必要と判断するか、自治体が制度の条件を満たすと確認できるか。この三つをつなぐことが大切です。
まずは困りごとをメモし、自治体に電話します。次に眼科で試着し、効果を記録します。見積書の基準内・対象外を確認してから申請します。この順番なら、買ってから対象外になるリスクを減らせます。
まぶしさを我慢することが外出や学習の前提になってはいけません。制度を使える可能性があるなら、相談することから始めてみてください。
参考にした公的資料
情報確認日:2026年9月。制度の基準額、所得区分、必要書類、運用は改定・自治体差があります。申請前にお住まいの自治体へ確認してください。
眼科や取扱店への相談も忘れずに
遮光眼鏡の取り扱い店舗は、眼科の近くにあることもあります。受診の際に、遮光眼鏡を試せる店舗や登録された取扱業者を知っているか、医師に聞いてみるのもよいでしょう。眼科で紹介された店舗でも、申請前に注文や支払いをせず、自治体への事前相談と支給決定の順番を確認してください。

