視覚障害児のプログラミング教育とは?触って学ぶロボットの動きを活用した全盲の小学6年生の挑戦と学習意欲の高まり

全盲の小学6年生がロボット教材を使ってプログラミングを学ぶ様子。With Blindと福岡工業大学によるオンライン授業のイメージ 視覚障害
スポンサーリンク

「視覚障害がある子どもでも、プログラミングは学べるのでしょうか」

子どもの将来を考えるなかで、そう感じる保護者は少なくないでしょう。

小学校でプログラミング教育が始まり、習い事として教室へ通う子どもも増えました。一方、多くの教材は画面に表示された文字や図形を見ることを前提に作られています。視覚障害のある子どもは、本人に興味や意欲があっても、学べる場所や教材にたどり着きにくいのが現状です。

今回紹介するのは、一般社団法人With Blindが福岡工業大学と連携して実施した、全盲の小学6年生・カイ君に向けた全5回のロボットプログラミング授業です。

使用したのは、パソコンの画面を見ずに、ロボット上部のテンキーを触って命令を入力できる教材。入力したプログラムの結果は、音やロボットの動きとして返ってきます。

授業を通してカイ君が身につけたのは、プログラミングの知識だけではありませんでした。

思い通りに動かなければ原因を考える。何度も試し、修正し、自分の考えを形にする。最終回には、学んだ命令を組み合わせ、自ら考案した「探索ロボット」を完成させました。

その成長を支えたお父様、教材を提供した木室先生、講師を務めた大学生の佐藤さんと江上さん。それぞれの思いをたどると、子どもの可能性を広げるために必要なのは、障害の有無を超えて「やってみたい」と思える機会なのだと気づかされます。

スポンサーリンク

視覚障害児のプログラミング教育が始まるまで

視覚障害のある子どもが学びたいと思っても、対応できる教室や教材はまだ限られています。カイ君も学校外の学びを探すなかで、With Blindのロボットプログラミング授業と出会いました。新たな一歩です。

視覚障害のある子どもは学べる機会が少ない

「視覚障害のある子どもは、教育の機会がかなり少ないと感じています」

カイ君のお父様・隆一さんは、そう話します。

学校では基礎的な教育や視覚障害に応じた支援を受けられても、子どもの興味に合わせた専門的な学びまで、すべてを補えるわけではありません。

プログラミング教室を探しても、教材や指導体制の問題から、視覚障害児の受け入れが難しい場合があります。保護者が自分で教えようとしても、どの教材を選び、どのように説明すればよいのか分からないこともあるでしょう。

隆一さんは、以前からカイ君に学校以外の学びも経験してほしいと考えていました。数学の授業を受ける機会があり、その延長でプログラミングも学ばせたいと思っていたそうです。

視覚障害者への理解が進んでいないのです。

カイ君はすでにScratchやマインクラフトに触れ、命令を組み合わせて物を動かす遊びを楽しんでいました。一度興味を持つと集中して取り組む性格もあり、プログラミングとの相性は良さそうに見えたといいます。

そこへWith Blindから、ロボットプログラミング授業の案内が届きました。

「学校では経験できないことを学べるかもしれない」

そう感じたことが、参加を決めるきっかけになりました。

小学2年生の夏に視力を失ったカイ君

カイ君が視力を失ったのは、小学2年生の夏休みでした。

生活の仕方も学び方も、それまでとは大きく変わります。親として、将来への不安や戸惑いがなかったはずはありません。

それでも隆一さんは、カイ君の歩みを「悲劇の物語」として受け取ってほしくないと話します。

「見えなくなったことを悲劇として捉えてほしくないんです。本人は今も淡々と楽しく暮らしていますし、選択肢がすべて狭まったとも思っていません」

できなくなったことだけを見るのではなく、今できることや、これから出会えるものへ目を向ける。その考え方は、隆一さんの子育ての軸にもなっています。

「面白いかつまらないかは、やってみないと分かりません。まずは挑戦してみることが大事だと思っています」

カイ君は、きっかけさえあれば夢中になるタイプだそうです。親が先回りして「難しいだろう」と決めるのではなく、体験できる場所を探し、まず触れさせてみる。今回の授業も、そんな関わり方から始まりました。

画面を見ずに学べるロボットプログラミング教材

今回の教材は、福岡工業大学の木室義彦先生が研究・開発に携わった「10キープログラミングロボット」です。

ロボットの頭部には、電話と同じ配列のテンキーが付いています。中央の5番キーには、指で触れて分かる突起があります。ここを起点に、上の2番は前進、下の8番は後退、左の4番と右の6番は回転というように、触覚でボタンの位置を確かめながら命令を入力できます。

パソコンを使わず、ロボットの移動や音だけでなく、FOR文、IF文、WHILE文なども入力可能です。超音波、明るさ、加速度、地磁気、温度といったセンサーも備えています。

ロボットに命令を入力すると、結果がその場で動きや音として返ってきます。

前へ進む。後ろへ下がる。曲がる。音を鳴らす。

画面上の文字だけでは捉えにくいプログラムの仕組みを、身体感覚を通して理解できるのが特徴です。

電話と同じ配列のテンキーを備えた10キープログラミングロボット。中央の5番キーには触って分かる突起があり、上下左右のキーで前進・後退・回転を入力できます。

子どもに語りかける絵本形式の教材

操作説明には、ロボットを「テンちゃん」と名づけた絵本形式の教材も用意されています。

「僕と一緒にプログラミングしてくれないかな?」

そんな語りかけから始まり、電源の入れ方やテンキーの配置、前進命令などを順番に学んでいく内容です。難しい用語を先に覚えさせるのではなく、ロボットと遊びながら「このボタンを押したらどうなるのだろう」と試せる構成になっています。

教材には、成功だけでなく失敗も学びとして楽しむ考え方が盛り込まれています。

ロボットは、入力されたプログラムの通りに動きます。入力を間違えれば、間違えた通りの動きになる。だからこそ、子どもは「あれ?」と立ち止まり、何が違ったのかを考えます。

これは、今回の授業でカイ君が何度も経験したことでもありました。

ロボットの「テンちゃん」が子どもに語りかける絵本形式の教材。触る、聞く、動かすという体験を通じ、基本操作から段階的に学べます。

※ロボットの「テンちゃん」が子どもに語りかける絵本形式の教材。触る、聞く、動かすという体験を通じ、基本操作から段階的に学べます。

大学とWith Blindがつないだ視覚障害児の学び

福岡工業大学・木室先生

※福岡工業大学・情報工学部 情報システム工学科 教授 木室義彦氏

今回の授業が実現したきっかけは、With Blindの國宗さんが2024年に木室先生の論文を読み、教材の提供を依頼したことでした。

授業の企画と運営はWith Blindが担い、木室先生が教材を提供。実際の講師は、福岡工業大学の学生である佐藤さんと江上さんが担当しました。

木室先生によると、ロボット教材は視覚の有無にかかわらず、子どもたちの関心を引き出しやすいといいます。

「こちらが壁があるのではないかと思うこと自体が、間違いなのではないかと感じました。視覚の有無に関係なく、子どもたちはロボットに触り、どんどん質問してくれます」

画面中心の教材との違いは、参加者がロボットの動きを共有しやすい点にもあります。

カイ君がロボットを触り、自分の考えを言葉にする。講師は画面越しに動きを確かめ、お父様も必要に応じて状況を補足する。一つのロボットを囲むように、子ども、保護者、学生、大学の先生が会話を重ねていきました。

距離や年齢、立場の違いを超えて、一緒に考えられる場が生まれたのです。

学生講師が工夫した視覚に頼らない伝え方

オンラインでロボットプログラミングを学ぶ視覚障害児に対し、大学生講師が視覚に頼らない言葉で操作方法を説明しているイメージ

「これ」「そこ」を使わない授業

第1回から第3回を担当した佐藤さんにとって、視覚障害のある子どもへの指導は初めてでした。

最初に話を聞いたときは、楽しみと同時に不安もあったといいます。

「どのような言葉を使えば伝わるのか、本当に自分に教えられるのかと考えました」

佐藤さんが特に注意したのは、視覚を前提とした「バリア言葉」を避けることでした。

普段の授業では、つい「ここを見てください」「これを押してください」と言ってしまいます。しかし、視覚に頼れない相手には、「ここ」や「これ」だけでは位置が伝わりません。

そこで、

「5番の上にあるボタンです」
「左から3番目です」
「5番を起点に、指を一つ右へ動かしてください」

といったように、触って確かめられる位置を具体的に伝えました。

授業用の原稿も自ら作り、何度も声に出して練習したそうです。木室先生への相談は最小限にとどめ、自分の言葉で授業を組み立てました。

佐藤さんにとって、これはプログラミングを教える準備であると同時に、「相手に伝わる言葉とは何か」を見直す時間でもありました。

音から始まり、繰り返し処理へ

第1回は、ロボットの構造やテンキーの配置を確認し、前進、後退、左右回転、音といった基本命令を学びました。

5番キーを起点にすれば、どの方向にどのボタンがあるのかを触覚で把握できます。カイ君は授業外でもロボットを触り、早い段階でボタンの位置を覚えていきました。

音の命令では、カイ君が関心を持っているピアノともつながりました。「きらきら星」の演奏にも挑戦し、数字の入力が音になる面白さを体験します。

第2回では、複数の命令を順番に並べる逐次処理を学びました。

前進して戻る。Uターンする。四角形や三角形を描くように動く。

ところが、ロボットは理論通りに正確な角度で曲がるとは限りません。床との摩擦やキャタピラの状態、電池残量などによって、同じ命令でもわずかな誤差が生じます。

左へ90度曲がるつもりが少し足りない。

そこでカイ君は、回転の数値を4から5へ変えるなど、自分で調整しました。

思い通りに動かない。だから、考える。

この時間こそ、プログラミングの大切な学びでした。

佐藤さんが感じた「伝わった」の瞬間

第3回では、同じ命令を効率よく繰り返すFOR文を学びました。

四角形を描くには「前進して曲がる」という動きを4回繰り返します。同じ命令を何度も入力する代わりに、繰り返しの回数と動きをまとめることで、プログラムを短くできます。

さらにカイ君は、繰り返しの中に別の繰り返しを入れる多重ループにも挑戦しました。

途中で分からないところを質問しながら、最後には自分でプログラムを組み立て、ロボットを動かします。

佐藤さんは、その瞬間をよく覚えています。

「自力で多重ループを完成させたときに、伝わったと思いました」

授業のために選んだ言葉や準備してきた内容が、カイ君の中で理解につながった。その喜びは大きかったそうです。

今回の経験で最も成長したことを尋ねると、佐藤さんは「伝える力」と答えました。

相手に合わせて言葉を選び、伝わったかどうかを確かめ、必要なら説明を変える。この力は、視覚障害のある子どもへの授業だけでなく、将来どのような仕事に就いても役立つはずです。

視覚障害児のプログラミング教育で育った考える力

授業後半では、条件分岐やセンサー制御に挑戦しました。カイ君は思い通りに動かない原因を探し、命令を何度も組み替えながら、自分の考えを形にする力を伸ばしていきます。 

江上さんの先入観を超えたカイ君の理解力

第4回と第5回は、江上さんが担当しました。

引き継ぎ時には、それまでの授業内容やカイ君の理解度が共有されました。それでも江上さんは、どこかで「小学6年生なら、この程度の内容だろう」と考えていたそうです。

実際に授業が始まると、その印象はすぐに変わりました。

カイ君はScratchやマインクラフトの経験を生かし、新しい命令を覚えるだけでなく、「自分のやりたい動きをどう実現するか」を考えていました。

理解が早く、質問も積極的です。

カイ君の反応に合わせ、江上さんは用意していた授業の脚本を何度も修正しました。

「年齢ではなく、その人の興味や理解度に合わせて教えることが大切だと学びました」

教える側が決めた枠に子どもを当てはめるのではなく、理解が進めば次の課題へ進む。カイ君の力を目の前で知ったからこそ、授業の内容も変わっていったのです。

センサーで条件を判断する

第4回では、IF文やELSE文を使った条件分岐を学びました。

「もし雨が降ったら傘を持つ」

そんな日常的な例をロボットの動きに置き換えます。

「もし障害物があったら右へ曲がる」
「障害物がなければ前へ進む」

ロボット前方の超音波センサーが物体を検知すると、命令に従って動きが変わります。

ほかにも、明るさ、加速度、地磁気などのセンサーを体験しました。明るさの差が小さく反応しにくいときには、ロボットにタオルをかぶせて暗い状態を作ります。加速度センサーでは、傾けると音が鳴るプログラムを試しました。

抽象的に見える条件分岐も、ロボットの反応として確かめると意味を理解しやすくなります。

前進・後退・回転などの基本命令に加え、繰り返しや条件分岐もテンキーから入力できます。超音波、明るさ、加速度、地磁気、温度などのセンサーも搭載されています。

※前進・後退・回転などの基本命令に加え、繰り返しや条件分岐もテンキーから入力できます。超音波、明るさ、加速度、地磁気、温度などのセンサーも搭載されています。

全盲の小学生が考案した探索ロボット

全5回のなかで、カイ君が最も楽しかったと振り返るのが、最終回の自由制作です。

これまで学んだ命令を使い、自分が作りたいロボットを考えます。

カイ君が選んだのは、障害物を探し、見つけた方向へ進む「探索ロボット」でした。

「自分でこうしたい、ああしたいと思ったことを実現できたのが楽しかったです」

一方で、この最終回が最も難しかったとも話します。新しい命令が一度に増え、どれがどの働きをするのか分からなくなることがあったからです。

分からないときは先生に質問する。それでも、すぐに答えをもらうだけではありません。

命令を組み替えて動かす。うまくいかなければ戻す。別の組み合わせを試す。

何度も繰り返しました。

センサーの弱点から生まれた工夫

探索ロボットを作る途中で、一つの課題が見つかりました。

超音波センサーは、近くにある物体は検知できますが、離れた場所にある障害物までは見つけられません。その場に止まったままでは、探索できる範囲が限られてしまいます。

そこでカイ君は、少しずつ前へ進みながら障害物を探す動きを考えました。

ロボットの弱点を知り、別の動きを加えて補う。

これは、教えられた命令をそのまま再現しただけではありません。目的を達成するために、自分で方法を考えた結果です。

江上さんは、カイ君が自ら原因を探し、何度も試す姿が特に印象に残っていると話します。

「基礎を教えたあとは、自分で応用する力が大きく伸びていました。子どもの可能性は、年齢だけでは決まらないと感じました」

キャプション案:前方の障害物を探索し、見つけると接近するサンプルプログラム。条件分岐と超音波センサーを組み合わせて動きを制御します。

前方の障害物を探索し、見つけると接近するサンプルプログラム。条件分岐と超音波センサーを組み合わせて動きを制御します。


「次はもっと難しいことをやりたい」

完成したロボットが思い通りに動いたとき、カイ君は大きな達成感を得ました。

ロボットプログラミングの魅力を同じ小学生へ伝えるなら、どう説明するか。インタビューで尋ねると、次のように答えてくれました。

「分かりやすいし、ロボットが本当に動いていると、自分で動かせるんだという実感がすごく湧きます」

また同じような授業があれば参加したいかという質問には、迷わず「参加したい」と答えました。

ただし、希望があります。

「同じ内容ではなく、もう少し高度なことをやりたいです」

できたことで満足するのではなく、さらに先へ進みたい。

5回の授業は、カイ君のなかに新しい学習意欲を生み出していました。

授業後もロボットを動かし続けたカイ君

お父様がカイ君の変化を強く感じたのは、授業が終わったあとの姿でした。

先生とのオンライン授業は、すでに終了しています。それでもカイ君は一人でロボットを触り、30分ほど動かし続けました。

プログラムを組み替え、動きを確かめ、さらに別の方法を試します。

「授業後も、探索ロボットで30分くらい遊んでいました。勉強というより、おもちゃのように試行錯誤していたんです」

学ばされているのではなく、自分から遊びながら学んでいる。

隆一さんにとって、その姿はうれしい変化でした。

さらにロボットは、目の見える5歳の弟との遊びにもつながりました。兄弟が同じ教材を囲み、一緒に動きを確かめる。障害の有無を意識することなく、同じ面白さを共有する時間が生まれたのです。

ロボットはプログラミング教材であると同時に、人と人をつなぐコミュニケーションの道具にもなっていました。

見えていた頃の夢と現在の希望

視力を失う前、カイ君はYouTuberになりたいと思っていました。

今は、その夢への関心は薄れています。ただし、夢を諦めたという受け止め方とは少し違います。

「今の方が、逆にいろいろな可能性が見えてきています」

カイ君はそう話しました。

現在、特に夢中になっているのはピアノです。視力を失う前はギターを習っていましたが、小学4年生のとき、ピアノの先生から声をかけてもらったことをきっかけに始めました。

最初から将来の目標を決めていたわけではありません。

チャンスがあったから、やってみた。

すると、夢中になれるものが見つかりました。

ロボットプログラミングも同じです。体験する機会がなければ、自分に合うかどうかは分かりません。

隆一さんが子育てで大切にしているのは、子どもの好奇心を閉じないことです。

「きっかけさえあれば、あとは自分ではまっていくタイプです。いろいろなことに閉じず、まずやってみることが大事だと思います」

視覚障害があるから、できることが減った。

そう決めるのではなく、新しい人や学びと出会うことで、別の可能性が増えていく。そのことを、カイ君の歩みが示しています。

子どもの可能性を広げる学びの環境とは

隆一さんは、視覚障害児の教育にはまだ機会が不足していると感じています。

学校で学べる内容には限りがあり、家庭だけで専門的な学習を支えるのも簡単ではありません。だからこそ、学校、大学、支援団体、家庭がつながり、それぞれの得意分野を持ち寄ることに意味があります。

今回の授業では、With Blindがカイ君の関心と福岡工業大学の教材をつなぎ、大学生が講師として関わりました。一人の子どものために、立場の異なる人たちが集まったことで、新しい学びの機会が生まれています。

隆一さんは、将来について次のような願いを語りました。

「本当は、With Blindというカテゴリーがなくても、普通の小学校で障害のある子もない子も一緒に学べる社会になるといいと思っています。目が見えない子も、耳が聞こえない子も、ほかの子どもたちも、同じようにプログラミングを学べる環境になってほしいです」

特別な場所を探さなければ学べない状態ではなく、誰もが身近な場所で、自分に合った方法を選べる社会へ。

お父様の言葉には、そんな願いが込められていました。

木室先生が感じた子どもと学生の可能性

木室先生は、今回の授業でカイ君の成長だけでなく、学生講師の変化も感じていました。

佐藤さんは、視覚に依存しない言葉を考え、伝える力を磨きました。江上さんは、自分が持っていた「小学生ならこの程度」という思い込みに気づき、相手の興味や理解度に合わせて授業を組み直しました。

教える側もまた、子どもから学んでいたのです。

「年齢や障害の有無にかかわらず、学ぶきっかけはあります。子どもたちだけでなく、教える人にとっても学びの機会になると感じています」

木室先生は、教材を全国の盲学校へ広げる取り組みにも関わっています。教材を提供することは、子どものためだけではありません。これまでプログラミングを教えたことのない先生が、新たな教育方法を知るきっかけにもなります。

今回の経験を、授業を担当した二人だけで終わらせず、後輩や卒業生にもつないでいくこと。それが今後の課題だといいます。

一人の子どもへの授業から、教える人の輪が広がっていく。

その積み重ねが、視覚障害児のプログラミング教育を特別なものではなく、当たり前の選択肢に近づけていくのでしょう。

まとめ|子どもの可能性は学ぶ機会と出会いで広がる

今回の全5回の授業で、カイ君は基本命令、繰り返し、条件分岐、センサー制御などを学びました。

ただし、最も大きな成果は、覚えた命令の数ではないのかもしれません。

ロボットが思い通りに動かないときに、原因を考えたこと。

分からないことを自分から質問したこと。

何度も組み替えながら、自分のアイデアを探索ロボットとして形にしたこと。

そして授業が終わったあとも、遊ぶように試行錯誤を続けたこと。

そこには、自分で学びを進めていく力が表れていました。

同時に、佐藤さんと江上さんも、カイ君への授業を通して成長しました。木室先生は、子どもの可能性に大人が壁を作ってはいけないと改めて感じました。お父様は、学校では得にくい体験が、息子の新たな興味を引き出す様子を見守りました。

視覚障害があるから、プログラミングは難しい。

そう決める必要はありません。

教材や伝え方を工夫し、興味に寄り添ってくれる人と出会えれば、学びの可能性は広がります。

「また参加したいです。でも、次はもっと難しいことをやりたいです」

カイ君が語ったこの言葉は、5回の授業で得た自信と、これからの成長への期待を表しています。

子どもの未来を広げるのは、大人が用意した正解ではありません。

「やってみたい」という気持ちを受け止め、挑戦できる機会へつなぐこと。その小さな一歩が、まだ知らない可能性との出会いになるのです。

With Blindからのお知らせ

視覚障害があり、仕事の進め方やキャリア形成、生成AIの活用について悩んでいる方は少なくありません。

With Blindでは、同じような課題を経験してきた仲間や講師とつながりながら、学び直しやAI活用、働き方について相談できる講座やコミュニティを運営しています。

一人で抱え込まず、誰かと対話することで、新しい視点や可能性に気づけることがあります。

仕事や学び、生成AI活用について相談したい方は、オンラインスクールWith Blindの講座や個別相談をご活用ください。

※画像はイメージです。

タイトルとURLをコピーしました