With Blind | 暮らしと住まい
視覚障害があっても、自分に合う家を選びたい。
体験談と資料で考える賃貸住宅の探し方
家賃も場所も希望に合っている。それなのに、視覚障害があると伝えたところで、部屋探しの話が止まってしまう。With Blindのよーすけにも、そんな経験がありました。
一方で、快く迎えてくれた大家さんもいます。UR賃貸住宅を選んだ経験も、これから住まいを探す方にお伝えしたいことの一つです。
この記事では、よーすけの体験を交えながら、物件選び、内見、契約で確かめたいことを紹介します。視覚障害のある人の住環境を調べた研究や、ほかの人の体験記事も取り上げます。

1.よーすけの体験記|断られたことも、歓迎してもらえたことも
こんにちは。With Blindのよーすけです。
私は長く一人暮らしをしてきました。それでも、マンションを探していたとき、視覚障害を理由に断られたことがあります。
伝えられた理由は、「一人で家事をしているときに火を出したら大変だから」「目が悪い人に、どのように接したらいいか分からないから」というものでした。
これまで一人で生活してきたのに、見えないというだけで、暮らせないと思われてしまう。普段どのように家事をしているかを聞いてもらえないまま断られるのは、やはりつらいものです。
ただ、そうした大家さんばかりではありませんでした。視覚障害があっても歓迎してくださり、一人暮らしを応援してくれる大家さんにも出会いました。快く受け入れてもらえたことは、とても嬉しかったです。
部屋探しでは、家賃や間取りに加えて、大家さんや管理会社と安心してやり取りできるかどうかも大切だと感じています。
2.私が利用していたUR賃貸住宅
私自身、UR賃貸住宅を利用していたこともあります。視覚障害のある人も、収入などの申込条件を満たせば入居できるため、住まい探しの選択肢になりました。
URと聞くと、郊外の大きな団地を思い浮かべる方も多いかもしれません。でも、駅前や買い物に便利な場所にあるマンションタイプの物件もあります。「団地は考えていない」という方にも、一度調べてみてほしいと思っています。
入居時の出費を抑えやすい。
初期費用を比較するときのポイント。
長く暮らす場合にも助かる。
保証人が不要なことも特徴です。入居時だけでなく、長く住む場合には更新料がかからないことも助かります。
ただし、必ず民間の賃貸より安くなるわけではありません。月々の家賃や共益費を含めて比べましょう。ほかの条件が同じなら、更新料のある物件との差は、住み続けるほど大きくなります。
URは独立行政法人都市再生機構が運営する賃貸住宅です。一般の民間賃貸に加えて、こうした公的な機関が運営する住宅も探してみると、候補が広がります。空室や申込条件は、希望する物件の窓口で確認してください。
3.調査と体験記事から見える住宅事情
よーすけのほかにも、住まい探しで苦労した経験を発信している人がいます。住みやすい家の工夫を調べた研究と合わせて読むと、部屋探しで考えたいことが具体的になります。
住環境の研究|安全性に加えて、本人にとっての住みやすさも
2026年6月、日本建築学会の論文集に、視覚障害のある人の住宅環境と健康関連QOL(生活の質)の関係を調べた研究が掲載されました。有効回答は540件です。
物の置き場所を決める、家具の配置を工夫する、物を減らす、明るさを調整するなど、自宅で行われている取り組みが紹介されています。安全性だけでなく、本人の暮らしに合った環境を考える資料です。
「ここなら家事をしやすそう」「落ち着いて過ごせそう」といった視点も、内見で大切にしたいと思います。なお、回答者は60歳以上が約74%を占め、若い世代の賃貸探しや入居拒否率を調べた研究ではありません。
研究論文・2026年:一般住宅に暮らす視覚障害者の住宅環境調整の取り組みと健康関連QOLの関係に関する研究
不動産業界の調査|受け入れ拒否も、契約に至らない理由の一つ
全日本不動産協会の全日みらい研究所は、2022年に会員を対象とした調査を行い、1,919件の回答を集めています。
高齢者や障害のある人の賃貸契約が成立しなかった理由として、希望条件と物件が合わないことに加え、家主や管理会社による受け入れ拒否が挙げられています。
これは視覚障害者だけを対象とした調査ではありません。結果をそのまま「視覚障害者が断られる割合」として読むことはできませんが、不動産業界から見た課題を知る資料になります。
調査資料・2022年:住宅確保要配慮者の賃貸住宅への入居円滑化に関する調査レポート(PDF)
Spotliteの記録|契約当日に断られた経験を、業界へ伝え続ける
Spotliteの高橋昌希さんは、視覚障害のある人の引っ越しを手伝った際の経験を紹介しています。障害者手帳のコピーを提出したところで入居を断られたり、契約当日の朝に取り消しの連絡を受けたりしたそうです。
記事には、発信をきっかけに不動産業界の団体と交流が生まれ、研修やシンポジウムにつながった経緯も書かれています。実際の暮らしを知ってもらう機会をどう増やすか。With Blindとしても考えていきたいことです。
支援者による体験コラム・2025年9月26日:視覚障害者が家を借りること。4年越しの活動を経てシンポジウムに登壇しました
個人ブログ|部屋を選んだときの条件と、住んでからの気づき
「全盲ママのブラインドlife」には、就職と同時に始めた一人暮らしの経験がつづられています。
駅やスーパーに近く、道が分かりやすいことを重視した部屋選び。触って区別できる食器の工夫や、家具の置き方によって掃除が大変だった経験など、暮らし始めてからの気づきも紹介されています。
自分ならどんな場所や家具が使いやすいかを考える参考になります。
個人の体験記事:全盲ママの視覚障害life② 視覚障碍者の生活 初めての一人暮らし
不動産会社の経営者の発信|貸す側・仲介する側ができること
不動産会社を経営する三田正明さんは、noteで、情報の得にくさ、建物や設備の使いにくさ、周囲の誤解や偏見という三つの面から、視覚障害者の住まい探しを取り上げています。
借りる本人の工夫に加えて、不動産会社や大家さんができることを考える記事として紹介します。
不動産事業者の解説・2024年4月17日:視覚障害者の住まい探しでネックとなる乗り越えるべき3つの障壁
4.まずは、自分の生活に合う条件を整理する
部屋探しでは、家賃や広さに加えて、仕事や普段の外出先とのつながりも考えたいところです。通勤が多いなら駅までの歩きやすさ。在宅勤務が中心なら、周囲の音や仕事をするスペース。頼れる人の近くに住むことを優先したい方もいるでしょう。
家賃と管理費を合わせて、毎月いくらまで払えるか。
仕事や買い物に、無理なく通えるか。
設備、照明、音、動線で外せない条件は何か。
「駅徒歩5分」でも、大きな交差点を渡る道と、歩き慣れた道では負担が違います。弱視の方は照明やまぶしさも大切な条件です。「バリアフリー物件」という名称だけで決めず、自分の暮らしに合うかを確かめましょう。
問い合わせでは、希望と必要な配慮を一緒に伝える
最初から病名や経緯を詳しく説明する必要はありません。住まいの条件を伝え、説明や内見で手伝ってほしいことを添えます。
一人暮らしの部屋を探しています。希望エリアは○○で、家賃は管理費込みで○万円までを考えています。
視覚障害があるため、物件情報は読み上げソフトで確認できる文章でいただけると助かります。内見では、部屋の配置と設備の操作方法を確認したいです。
間取り図だけでは分かりにくい場合は、「玄関を入って右に浴室、左に台所、正面に居室」のような説明をお願いできます。家族や支援者が同行する場合も、説明は住む本人に向けて行ってもらいましょう。
5.内見では、駅からの道・共用部分・室内を確かめる

駅や店まで、自分が使いやすい道か
可能なら駅やバス停から建物まで、必要な同行支援を使って歩いてみてください。横断歩道、信号、歩道の広さ、看板、自転車の通行量なども歩きやすさに関わります。
建物の入口を見つける目印、よく使う店への経路も確認しましょう。夜の帰宅が多く、暗さで見え方が変わる方は、その時間帯も確かめられると安心です。
共用設備は、実際の操作まで確認する
| 設備・場所 | 確かめたいこと |
|---|---|
| オートロック | 鍵やボタンの位置が分かり、自分で解錠できるか。 |
| エレベーター | ボタンを区別できるか。到着階が分かるか。 |
| 郵便受け | 自分の区画を見つけ、鍵を開けられるか。 |
| 宅配ボックス | 荷物の到着確認から取り出しまで操作できるか。 |
| ゴミ置き場 | 経路と分別場所が分かるか。ルールを文章でもらえるか。 |
宅配ボックスがあっても、タッチパネルの操作が難しい場合があります。「あるか」に加えて「どう使うか」まで確かめましょう。目印を付けたい場合は、管理会社に場所や方法を相談します。
室内は、普段の家事を思い浮かべて
新しい設備が使いやすいとは限りません。画面で操作するものより、触って分かるボタンやつまみのほうが扱いやすいこともあります。
台所では、コンロの操作方法、動作の確かめ方、換気扇、調理台の広さを確認します。IHでも鍋や天板は熱くなり、タッチ式の操作が難しい場合もあります。種類だけで判断せず、自分が慣れた方法で扱えるかを見てください。
給湯器、浴室の操作盤、インターホン、エアコンも忘れずに。説明書を読み上げで確認できるかも聞いてみましょう。
火の扱いを心配されたら、普段の器具や確認方法を具体的に話す方法があります。入居のために「料理をしない」など、暮らしを無理に制限する約束をする必要はありません。
6.断られたときは、一人で抱え込まない
断られることが続くと、問い合わせること自体が嫌になるかもしれません。でも、断られたことと、その人が一人暮らしをできるかどうかは別の話です。
可能であれば理由を確認し、日時、会社名、物件名、相手の説明を残しておきましょう。メールも保存しておくと相談に役立ちます。その場で交渉を続けるか、ほかの物件を探すかは、自分の負担も考えて決めて構いません。
障害を理由とする不当な差別的取扱いは禁止されています。対応に疑問があるときは、自治体の障害者差別に関する相談窓口や障害福祉の窓口に相談できます。
不動産会社・UR窓口
空室、条件、内見の相談。
居住支援法人・自治体の住宅担当
支援できる範囲を確認。
障害福祉・差別相談窓口
状況を整理して相談。
住まい探しを支える「居住支援法人」
居住支援法人は、障害のある人や高齢者など、住宅の確保に配慮が必要な人を支援する、都道府県の指定を受けた法人です。情報提供や相談、入居後の見守り、家賃債務保証などに関わる支援を行います。
業務は法人ごとに異なります。視覚障害のある人に対応しているか、希望地域が対象か、物件探しや調整をどこまで手伝ってもらえるか、費用はいくらかを確認してください。相談先が分からなければ自治体の住宅担当に尋ねてみましょう。
入居後の見守りがある「居住サポート住宅」
2025年10月に認定制度が始まった居住サポート住宅では、大家さんと居住支援法人などが連携し、日常の安否確認、訪問などによる見守り、必要に応じた福祉サービスへのつなぎを行います。
似た名前の「セーフティネット登録住宅」は、登録した対象者の入居を拒まない住宅です。居住サポート住宅は、入居中の支援を行う住宅として認定される仕組みです。
視覚障害に対応した設備や24時間の介護が必ず備わるわけではありません。訪問や連絡の頻度、支援料金、緊急時の連絡先、共有する情報を確認し、自分の暮らしに合うかを考えてください。
参考:国土交通省の制度案内 / 居住サポート住宅情報提供システム
7.契約前に、書類の内容と費用を確かめる
重要事項説明書や契約書は、できれば事前に、読み上げで確認できるデータをもらえないか相談しましょう。PDFでも、紙を画像にしただけのものは読みにくい場合があります。「スクリーンリーダーで読める文字情報の入ったデータ」と伝えると具体的です。
敷金・礼金・仲介手数料・保証料などの合計。
家賃・管理費・共益費・必須サービス料の合計。
更新料、解約予告の期限、短期解約時の条件。
設備の故障時の連絡先や、目印の取り付け・交換ができる範囲も確認しましょう。支援付きの住宅では、支援が不要になった場合や、変更したい場合の扱いも聞いておきたいところです。
署名に手助けが必要なら、代筆などの方法も事前に相談できます。国土交通省の指針にも、テキスト提供や本人の意思を確認した代筆などの配慮例があります。本人が内容を理解し、納得して契約できることが大切です。
参考:国土交通省の対応指針 / 関連記事:With Blind「書類記入について考えた記事」
8.引っ越した後の生活も、少しずつ準備する
新居では、慣れた家事でも物の位置や設備が変わり、最初は時間がかかります。荷物を入れるときは、玄関からトイレ、洗面所、寝る場所までの通路を先に確保すると動きやすくなります。
手伝う人には、物を移動するときに声をかけてもらいましょう。鍵、給湯器、インターホンなど、その日から使う設備は早めに確認します。管理会社の連絡先も、すぐに分かる形で保存しておくと安心です。
同行援護や居宅介護を利用する方は、転居前から自治体と事業所に相談してください。自治体をまたぐ場合は、手続きや事業所の調整が必要になることがあります。通勤や買い物の道を覚える時間も含めて準備しましょう。

9.大家さん・家族・支援者の方へ
大家さんへ。「視覚障害のある方も歓迎」と仲介業者に伝えてください
この記事を読んでくださっている大家さんに、一つお願いがあります。視覚障害のある方の入居を歓迎してくださる場合は、そのことを不動産仲介業者や管理会社にも伝えていただけると嬉しいです。
大家さんに受け入れる意思があっても、担当者が知らなければ、物件の紹介につながらないことがあります。「視覚障害のある方も相談してください」と伝えておいていただくだけでも、選択肢が広がるかもしれません。
接し方や暮らし方が分からないときは、まず本人に聞いてみてください。普段の生活も、手伝ってほしいことも、人によって違います。よーすけにとっても、歓迎してくれた大家さんとの出会いは嬉しい経験でした。
家族や支援者の方へ。まずは本人の希望を聞いてください
一人暮らしをすると聞いて心配になることもあると思います。まずは、どこに住み、どんな生活をしたいと考えているかを聞いてみてください。
内見で分かりにくい部分を説明する、書類を一緒に確認するなど、手伝えることはあります。ただ、物件を決めたり大家さんと約束したりするときは、本人の意思を確かめてください。
家事や外出で支援を使っていても、一人暮らしはできます。必要な助けを利用しながら、本人が望む暮らしを一緒に考えていけたらと思います。
自分の生活に合う住まいを見つけてほしい
住まいは、毎日の休息や仕事を支える大切な場所です。入居できるかどうかに気を取られて、本来かなえたかった希望を後回しにしてしまうこともあるかもしれません。
それでも、通勤しやすいこと、買い物に行きやすいこと、家で落ち着いて過ごせることなど、自分が大事にしたい条件は遠慮せずに考えてほしいと思います。
一般の民間賃貸に加えてUR賃貸住宅を探す。必要なら居住支援法人などに相談する。ご自身の生活や仕事に合った住まいで、ストレスをできるだけ減らし、心地よく暮らしてもらえたら嬉しいです。
With Blindとしても、視覚障害のある人の住まい探しに何ができるのか、引き続き考えていきたいと思っています。
制度・資料の確認日:2026年9月14日。申込条件、費用、空室状況は各窓口でご確認ください。紹介した体験記事は、それぞれの方の経験です。図解はWith Blindの記事用に整理したもので、研究結果のグラフではありません。


