「触った感覚を、写真や音声のように保存できたら?」
遠くにある彫刻の手触りを、自宅にいながら指先で感じる。ロボットが触った物の硬さを、人の手に伝える。そんな話を聞くと、ちょっとSFみたいですよね。でも、その未来は思っていたより近くまで来ていました。
こんにちは。一般社団法人With Blindのよーすけです。私は全盲です。2026年10月15日、ガイドさんと一緒に幕張メッセのCEATEC 2026へ行ってきました。
会場で特にワクワクしたのが、「超小型MEMS触覚センサ」です。さらに、スマホを持って歩くだけで通れる改札も実際に体験しました。この記事では、私が会場で触れた技術に加えて、屋内ナビ、水中ドローン、移動時間を遊びに変えるバスなど、気になった展示も紹介します。
自分で体験したことは体験談として、ほかの展示は公開情報をもとに書き分けました。「すごい!」で終わらず、見えない人の暮らしでどう使えそうかも、よーすけ目線で考えてみます。
CEATEC 2026は、未来の「できるかも」が集まる場所
CEATEC 2026は、2026年10月13日から16日まで幕張メッセで開催されたデジタルイノベーションの総合展です。テーマは「Transformation―企業が、産業が、そして社会が変わる―」。主催者発表では821社・団体が出展し、AI、ロボティクス、モビリティ、社会インフラなど、幅広い技術が集まりました。

展示会って、大きな画面を「見る」場所じゃないの? 全盲でも楽しめる?

画面だけの展示は分かりにくいこともあるよ。でも、開発者に直接質問できるし、装置に触れられる展示もある。何より「この技術を別の使い方にできないかな?」と考えるのが面白いんだ。
ガイドさんに会場の様子を教えてもらいながら、気になるブースでは担当者さんにどんどん質問しました。「これは何の技術ですか?」「触っても大丈夫ですか?」。視覚障害者向けではない展示でも、「これ、見えない人にも使えそう!」と思う瞬間がたくさんありました。
指先の感覚をデータにする「超小型MEMS触覚センサ」
今回、特に心をつかまれたのが、立命館大学と新潟大学による超小型MEMS触覚センサの展示でした。難しそうな名前ですが、ざっくり言えば「人の指先が感じている力を、小さなセンサで読み取る技術」です。
物を押したときの力だけでなく、横へずれる力まで測れるそうです。説明を聞きながら実物に触れると、「指先って、こんなに細かい情報を受け取っていたんだ」とあらためて驚きました。


横向きの力まで分かると、何がうれしいの?

例えば、イチゴやポテトチップスを持ち上げる場面を想像してみて。強すぎれば壊れ、弱すぎれば落ちる。人は「滑りそう」という小さな変化を指先で感じて、無意識に力を調整している。その感覚をロボットにも持たせようとしているんだ。
指先の感覚をデータにできれば、壊れやすい物を扱うロボットはもちろん、歩き方の分析や作業の練習にも使えそうです。これまで「職人の感覚」として言葉にしにくかった力加減まで、誰かに伝えられるようになるかもしれません。
写真付きの出典元:INTERNET Watch「遠隔地のモノの『硬さ』を伝えるデバイスほか フォトレポート④」
URL:https://internet.watch.impress.co.jp/docs/event/2148582.html
リンク先の画像説明:立命館大学と新潟大学による触覚センサや、対象物の硬さを離れた場所へ伝える装置が展示されている様子。
「触覚を録音する」ような未来にワクワクした
さらに面白かったのが、測った触覚を人の指へ返す技術です。振動や抵抗を使い、ザラザラした感じや物の硬さを伝えます。こうした技術はハプティクスと呼ばれています。
写真は景色を残せて、録音は音を残せます。それなら「触った感じ」も保存できるのでは? 説明を聞いた瞬間、想像が一気に広がりました。
- 触れることが難しい文化財の質感を、複製データで体験する
- 危険な場所にいるロボットが触れた情報を、安全な場所で受け取る
- オンライン学習で、教材の形や表面の違いを触覚で共有する
- 熟練者の手の動きや力加減を、訓練に生かす
もちろん、何でも本物そっくりに再現できるわけではありません。触った感覚には、硬さだけでなく、温度や湿り気などもあります。それでも、今まで保存しにくかった感覚をデータにしようとしている。その一歩だけでも、私はかなりワクワクしました。
研究者と当事者が出会うと、技術の行き先が増える
研究者の方とは、「視覚障害者が直接触れられない物の感覚を、装置で伝えられたら面白いですね」という話もしました。今後、一緒に何かできたらという話まで広がり、展示を見るだけでは終わらない出会いになりました。

完成した製品を、視覚障害者が待っているだけじゃないんだね。

そう。研究者は技術を知っていて、当事者は生活の中の困りごとや工夫を知っている。早い段階から一緒に考えれば、最初は想定されていなかった使い道が生まれるかもしれない。
研究者は技術のことを知っています。私たち当事者は、毎日の「ちょっと困る」を知っています。その二つが早い段階で出会えば、思いもしなかった使い道が生まれるはずです。もちろん、視覚障害者も一人ひとり違うので、いろいろな人が試せることが大切だと思います。
会場で体験した技術と、ネットで見つけた気になる展示
ここからは、ウォークスルー改札の体験談と、CEATEC公式情報や会期中の記事で見つけた気になる技術を紹介します。視覚障害者向けの展示とは限りませんが、「音や触覚と組み合わせたら、もっと便利になるかも」と想像しながら見てください。

1.設備を増やさず屋内位置を推定する空間AI「TRAILS」
zeteohの空間AI「TRAILS」は、施設の図面と人の動き方を学び、Wi-Fiやビーコンを新しく置かなくても屋内の位置を推定するシステムです。記事によると、誤差は1~3メートル。CEATEC AWARD 2026のネクストジェネレーション賞も受賞しています。
建物の中はGPSが苦手です。全盲の私にとっても、「今、建物のどこにいるのか」が分かるだけで安心感はかなり違います。音声案内や障害物の検知とうまく組み合わせて、駅や病院でも使えるようになったらうれしいですね。
写真付きの出典元:INTERNET Watch「空間AI『TRAILS』、Wi-Fiやビーコン不要で高精度の屋内測位」
URL:https://internet.watch.impress.co.jp/docs/event/2148128.html
リンク先の画像説明:屋内での位置を推定する技術について、画面や展示パネルを使って紹介している様子。
2.スマホを持って歩くだけ!JR東日本の次世代ウォークスルー改札
このウォークスルー改札は、私も実際に体験しました。スマホを持って歩くだけ。改札機に何もかざしていないのに、そのままスーッと通れてしまったんです。
「えっ、もう通れたの?」というくらい自然で、これはちょっと感動しました。
今は顔認証も実用化されている時代です。いつの間にか本人確認が終わり、気づけば改札を通れている。そんな未来が早く来たらいいなと思います。
白杖を持ち、さらに手荷物もあると、スマホやICカードを取り出して「ピッ」とかざす動作が意外と煩雑なんですよね。後ろに人が並んでいると、焦ることもあります。


本当に、スマホを持って歩くだけでいいの?

うん。何もかざさず通れて、「未来の改札ってこうなるのか!」とワクワクしたよ。
私にとって大切なのは、「きちんと改札を通れた」と音や振動で分かること。その確認さえできれば、こうしたウォークスルーの仕組みがどんどん実用化されてほしいです。
写真付きの出典元:INTERNET Watch「JR東日本、次世代ウォークスルー改札などを展示」
URL:https://internet.watch.impress.co.jp/docs/interview/2144271.html
リンク先の画像説明:スマートフォンなどをかざさずに通過する次世代ウォークスルー改札の展示。
3.水中ドローンが海をリアルタイムでデータ化
海洋デジタル社会パビリオンでは、富士通が水中ドローンなどを使い、海の中をデータにする「海洋デジタルツイン」を紹介していました。会場では、水槽を撮影したデータから、ほぼリアルタイムで3Dデータを作るデモも行われたそうです。
人が簡単には行けない海の中を、機械が調べて持ち帰ってくれる。さらにAIが形や距離を言葉で教えたり、立体模型や触覚に変えたりできたら、見えない人も海の研究をぐっと身近に感じられそうです。「見える化」だけでなく、「聞ける化」「触れる化」にも期待しています。
写真付きの出典元:INTERNET Watch「協調人工知能、水中ドローンによる海洋デジタルツインほか」
URL:https://internet.watch.impress.co.jp/docs/event/2148176.html
リンク先の画像説明:水中ドローンなどで集めた海の情報を、デジタル空間で活用する取り組みを紹介する展示。
4.移動時間そのものを楽しみに変える「MOOX-RIDE」
JTBのブースでは、トヨタ紡織の体験システム「MOOX-RIDE」を載せたバスが紹介されていました。場所に合わせて、映像、立体音響、座席の振動、風、ミストなどが連動します。移動時間そのものをアトラクションにしてしまう発想です。

映像が中心のXRは、全盲だと楽しみにくいんじゃない?

だからこそ面白いんだ。音、振動、風、香り、触覚を丁寧に組み合わせれば、「見えないから情報が減る」ではなく、別の感覚から旅が豊かになる可能性があるよ。
写真付きの出典元:INTERNET Watch「移動時間をエンタメに! MOOX-RIDEを体験」
URL:https://internet.watch.impress.co.jp/docs/event/2147745.html
リンク先の画像説明:車内で映像や音響、座席の振動、送風などを組み合わせ、移動時間を体験に変えるサービスの様子。
5.道路から給電する車と、自動運転の大型EVバス
併催のJapan Mobility Show Bizweek 2026では、ホンダが走っている電気自動車へ道路から電気を送る技術を展示。いすゞは、レベル4の自動運転を目指す大型EVバスを展示していました。
自動運転が進んでも、どこから乗るのか、いつ降りるのか、トラブル時にどうすればよいのかが分からなければ、一人での移動にはつながりません。車両だけでなく、予約から乗り降りまでを当事者と一緒につくってほしいと思います。
写真付きの出典元:INTERNET Watch「走行中ワイヤレス給電、自動運転大型バスほか」
URL:https://internet.watch.impress.co.jp/docs/event/2148387.html
リンク先の画像説明:道路から走行中の車へ電気を送る技術と、大型の自動運転EVバスを紹介する展示。
「すごい!」の先で、ちょっと考えたこと
- 情報の出口を増やす:グラフやランプだけでなく、音声、振動、触覚、読み上げ可能な文章でも伝える。
- 開発の早い段階から当事者が参加する:完成後に使えるかを確かめるのではなく、課題設定や試作の段階から一緒に考える。
- 選べることを目標にする:見える人と同じ方法へ合わせるのではなく、その人に合う方法で情報を受け取り、自分で判断して行動できるようにする。
新しい技術を見ると、つい「すごい!」で終わってしまいがちです。でも、本当に大切なのは、その技術が必要な人に届くこと。そして、使い方を選べて、自分の行動につながることだと思います。
見えない人も、未来を「つくる側」になれる
視覚障害者向けの技術というと、「見えない物を見えるようにする」という発想が注目されがちです。でも、見える人と同じ方法に近づけることだけが答えではありません。
音で分かるなら、音でいい。触覚で分かるなら、触覚でもいい。AIが状況を短い言葉で説明してくれるなら、それも一つの方法です。大切なのは、必要な情報を自分に合う形で受け取り、その情報を使って自分の意思で行動できることです。
それに私たちは、完成した未来をただ待っているだけではありません。「ここで困っている」「こう伝われば使いやすい」「この技術なら、こんなこともできそう」。そんな声を届けることで、未来の選択肢を一緒に増やしていけます。
触覚を保存する研究に指先で触れ、研究者と話し、ウォークスルー改札を実際に歩いてみる。さらに会場の技術をネットで調べていくと、想像がどんどん膨らみました。海の中の様子を聞ける日。白杖や荷物を持ったまま、立ち止まらずに改札を通れる日。遠くの文化財を指先で味わえる日。移動中の風や振動から旅を楽しめる日。
未来は、見える人だけのものではありません。
見えても、見えなくても、誰もが技術を使ってみて、「ここがよかった」「ここはもう少し」と言える。そんなふうに未来を一緒につくれる社会になったら、すごくワクワクします。With Blindでは、これからも新しい技術に触れながら、全盲の私が感じたことを率直に発信していきます。
※アイキャッチは、記事内容をもとにWith Blindが新規作成したAI生成のオリジナルイラストです。外部記事の写真は、転載許諾を確認できないため複製せず、各技術の紹介箇所に写真付きの出典元、URL、リンク先の画像説明を掲載しています。
参考文献・関連情報
- CEATEC 2026公式サイト「About/開催概要」(2026年10月16日確認)
- INTERNET Watch「CEATEC 2026が開幕。821社/団体が出展」(2026年10月13日)
- INTERNET Watch「遠隔地のモノの『硬さ』を伝えるデバイスほか フォトレポート④」(2026年10月16日)
- 立命館大学「力触覚技術応用コンソーシアム」
- 映像情報メディア学会「人にせまる触覚センサ技術とその応用」(2026年2月28日)
- INTERNET Watch「空間AI『TRAILS』、Wi-Fiやビーコン不要で高精度の屋内測位」(2026年10月14日)
- INTERNET Watch「JR東日本、次世代ウォークスルー改札などを展示」(2026年10月)
- INTERNET Watch「協調人工知能、水中ドローンによる海洋デジタルツインほか」(2026年10月15日)
- INTERNET Watch「移動時間をエンタメに! MOOX-RIDEを体験」(2026年10月14日)
- INTERNET Watch「走行中ワイヤレス給電、自動運転大型バスほか」(2026年10月15日)
※触覚センサとウォークスルー改札については、筆者が会場で実際に体験した内容を含みます。その他の技術は、上記の公開情報をもとに紹介しました。研究・実証段階の技術もあり、将来の実用化や視覚障害者への対応を保証するものではありません。

