「AIを使えば、視覚障害があっても仕事の悩みは解決するのでしょうか」
答えは、単純な「はい」ではありません。AIは、文章を整えたり、情報を探したり、考えを言葉にしたりする力を貸してくれます。一方で、AIだけでは整えられない文書の見た目があります。職場の人間関係や、相談しにくい空気も、AIを導入しただけでは変わりません。
2026年3月から8月まで、オンラインスクールWith Blindでは「AIと対話で切り拓く、視覚障害者の新しい働き方講座」を開催しました。月2回、全12回。視覚障害のある会社員を中心に、AIの使い方、仕事のつくり方、評価の受け方、職場での対話を学ぶ半年間でした。
この記事では、募集時に掲げた目標だけでなく、実際の講座で何が起きたのかを振り返ります。Zoomの開催記録と議事録、Plaud Noteに残された講座記録を照合しました。受講生が取り組んだ課題、うまくいかなかったこと、半年後に見つけた次の一歩まで、できる限り具体的にお伝えします。
なぜ、視覚障害に特化した働き方講座が必要なのか
障害者雇用の話では、「どの仕事ならできるか」が先に問われがちです。しかし、実際に働いている人の悩みは、職種名だけでは説明できません。
- 仕事を任せてもらえず、経験が増えない
- 自分の成果を、上司へうまく説明できない
- 必要な支援を頼むと、相手の仕事を増やしてしまう気がする
- 画面読み上げソフトで操作できないシステムがある
- 文書の内容は作れても、見た目を一人で確認しにくい
- 将来のキャリアを考えたいが、参考になる事例が少ない
これらは、本人の努力不足ではありません。「見えない・見えにくいことで生じる壁」「職場の仕組み」「本人の経験や技術」が重なって起きています。
一般的なAI講座では、画面を見ながらボタンを押す説明が中心になることがあります。講師が操作できても、スクリーンリーダー利用者が同じ手順を再現できるとは限りません。また、仕事術の講座で紹介される方法が、画像中心の資料やマウス操作を前提としていることもあります。
そこでWith Blindは、AIの機能を覚えるだけの場ではなく、「自分の仕事に持ち帰れるか」を確かめる場をつくりました。視覚障害のある講師や受講生が、自分の操作環境や職場経験を持ち寄ります。できたことだけでなく、できなかったことも共有します。
本人の力
経験、強み、伝え方、AI・ICTの操作
仕事の設計
業務の分け方、成果物、確認方法、評価
職場の環境
アクセシビリティ、支援体制、相談できる関係
どれか一つでは足りません。3つを行き来しながら、実際に働ける方法を探しました。
半年間、どのような講座を行ったのか
講座は2026年3月から8月まで、原則として毎月第1水曜日と第4水曜日の21時からZoomで開催しました。全12回です。問題提起や講師の経験を聞く回と、受講生が質問や実践結果を持ち寄る回を組み合わせました。
毎回の内容は、最初から固定された教材を順番に消化するだけではありません。前回の発言や宿題を受け、次の回で試す課題を決めました。講座そのものを、参加者とともに調整していく方法です。
働き方の悩みを言葉にする
仕事が少ない、評価が見えない、相談しにくい。まず、困りごとを本人の能力だけの問題にせず、仕事・環境・対話の問題に分けて考えました。
経験と強みを棚卸しする
これまで担当した仕事、周囲から頼られたこと、負担が少ない方法を整理しました。肩書や職種ではなく、再現できる行動に注目しました。
成果と評価を結びつける
「頑張った」ではなく、誰の何が改善したのかを説明する練習を行いました。上司へ相談するときの言葉や、役割を提案する方法も扱いました。
AIとアクセシブルな道具を試す
文章整理、情報収集、下書き、パソコン操作の補助などを試しました。AIがもっともらしい誤りを返すことや、画面操作でつまずく場面も確認しました。
履歴書を実際に作って検証する
ChatGPTやCopilotなどを使い、履歴書作成に挑戦しました。文章作成と、印刷される文書の見た目は別の課題であることが明確になりました。
職場の課題と次の一歩を考える
支援を頼みにくい職場、特定の人への依存、AIで自分でできる範囲を広げる方法を話し合いました。最終回では、半年後の変化と今後の行動を一人ずつ振り返りました。
講師の経験を聞くだけで終わらない
講座では、情報工学、システム開発、アクセシビリティなどの実務経験を持つ講師が、自身の経験を紹介しました。ただし、「この人ができたから、あなたもできる」という伝え方はしません。
同じ全盲や弱視でも、見え方、得意な操作、利用できる機器、勤務先の規則は違います。受講生は講師の方法をそのまままねるのではなく、自分の環境で使える部分を選びました。
質問と経験談を、教材に変える
受講生から出た悩みは、その場で答えて終わりにしません。「本人が伝えること」「上司や同僚と決めること」「道具で補えること」に分解しました。
例えば、仕事を頼まれないという悩みがあります。本人ができることを説明するだけでは、状況が変わらない場合があります。上司が多忙なら、説明を聞く時間さえ取れません。そこで、短時間で相談できる相手を複数つくる、定期面談を使う、小さな業務改善を一つ提案する、といった行動へ落とし込みました。
初回は「苦手」ではなく、一人ずつの強みから始めた
追加で確認したZoom議事録では、初回に受講生全員が、自分の得意なことと仕事上の課題を話していました。ここには、半年後の変化につながる種がすでにありました。
- 数百ページのPDFをAIで要約し、以前は支援者と何時間もかけていた作業を短時間で進めた経験
- 鉄道路線や地理を記憶し、細かな旅行計画を立てる力
- 相手の話を聞き、好みや希望をデザインへ反映する力
- 面談の内容や数字を記憶し、後から正確に共有する力
- 点字を付けた絵本を使い、子どもへ絵を見せながら読み聞かせる工夫
- 異なる文化や立場の人と議論し、合意をつくる力
- ExcelのショートカットやVBAを使い、作業を速く正確にする力
- 予期しない問題が起きたとき、別の方法を考えて試す力
講座では、これらを「障害を補うための工夫」だけで終わらせませんでした。ほかの人へ提供できる価値や、AIでさらに広げられる仕事として捉え直しました。
たとえば、旅行計画が得意な人には、希望条件を聞き取って旅程を組む仕事の可能性があります。Excelの効率化が得意な人には、手順をチームへ共有する役割があります。AIは、アイデアを出し、必要な工程を分け、最初の試作品を作る相手になりました。
画像や動画を「言葉に変える」実験も行った
絵本の読み聞かせ活動をしている受講生からは、手遊び歌の振り付けを動画から理解できないかという質問がありました。指の形をAIが誤認するなど、当時の画像認識では十分でない場面もありました。
そこで、動画全体を一度に説明させるのではなく、「1秒ごとの動作を順番に言葉で説明する」という方法が提案されました。AIの回答が違うときは、質問の範囲や表現を変えます。このやり取りから、AIの精度を待つだけでなく、情報の渡し方を工夫する大切さを学びました。
実践課題1|AIを使って履歴書を作る
7月の実践回では、受講生がAIを使って履歴書を作成しました。目的は、きれいな履歴書を競うことではありません。文章、表、写真、印刷という複数の要素がある仕事で、AIがどこまで役に立つかを確かめることでした。
確認した条件は、主に次の3点です。
- 写真が適切な位置と大きさで配置されているか
- 表、見出し、余白など、全体のレイアウトが整っているか
- 指定した用紙サイズと枚数に収まっているか
結果は、簡単ではありませんでした。提出された文書には、右端が切れる、写真が横に伸びる、用紙の向きが違う、志望動機だけ次のページへ送られる、といった問題がありました。Excelで内容を入力できても、「A4一枚に印刷する」という設定が抜けた例もありました。
自分の環境では一枚に収まり、印刷もできていました。でも、別の環境で開くと右側が欠けていました。
受講生の振り返りを要約
これは失敗談ではなく、重要な発見です。Word文書は、フォントやプリンターの設定によって改ページや余白が変わります。視覚障害のある人が文章の中身を一人で作れても、「別の人の画面でどう見えるか」は確認しにくい場合があります。
分かったことは「AIが使えない」ではない
AIは、学歴や職歴の整理、志望動機の下書き、年月の整合性確認で役に立ちました。複雑なWord操作を減らせた受講生もいます。テンプレートを先に渡し、「この形を保って内容を入れる」と指示する方法も有効でした。
一方、最終的な見た目の確認は残りました。講座では「AIで9割を整え、最後の1割は別の方法で確認する」という現実的な考え方を共有しました。人に丸投げするのではありません。AIが得意な工程と、人の確認が必要な工程を分けるのです。
| 工程 | AIが役立ったこと | 別途確認したいこと |
|---|---|---|
| 内容整理 | 職歴の並べ替え、要約、年月の確認 | 事実の誤り、表現の誇張 |
| 文章作成 | 志望動機の下書き、短文化 | 本人の言葉になっているか |
| 文書作成 | テンプレートへの入力、表の作成 | 見出し、罫線、フォントの統一 |
| 写真 | 画像の説明、サイズの確認補助 | 縦横比、自然さ、規定への適合 |
| 提出 | チェック項目の作成 | PDF化後の見た目、印刷結果 |
同じ課題を試す方へ|提出前の5項目
- 元の事実とAIが作った文章を照らし合わせた
- 用紙サイズ、向き、余白、ページ数を確認した
- 写真の大きさと縦横比を確認した
- PDFに変換し、文字が選択・読み上げできるか確認した
- 可能なら、提出先と異なる端末でも最終表示を確認した
実践課題2|10日間、自分の小さな困りごとにAIを使う
履歴書課題の後は、期間とゴールを決めた実践へ進みました。「何でもAIで解決する」では範囲が広すぎます。そこで、身近な困りごとを一つ選び、10日間でどこまで改善できるかを試す方針にしました。
記録するのは、使った指示文だけではありません。どこまで解決したか、何が残ったか、誰の確認が必要だったかも残します。この方法によって、「便利だった」という感想を、再現できる手順へ変えられます。
実践例には、履歴書やプロフィールの修正、情報の整理、文章の確認、職場で使う作業の自動化がありました。受講生の一人は、職場の法務に関係する情報を扱うAIエージェントの作成へ進みました。別の受講生は、対話を重ねるうちに、自分の経験を表す新しい肩書を見つけました。
実践課題3|職場の困りごとを「お願い」だけで終わらせない
8月の対話では、AIの操作よりも職場の関係が中心になりました。受講生からは、必要な支援を伝えても、周囲が忙しく「こちらでやっておく」と仕事を引き取られるという経験が語られました。助けてもらっているように見えても、本人の担当業務と成長機会は減ってしまいます。
反対に、普段のコミュニケーションを通じて相談相手を見つけ、正式に協力を頼んだ例もありました。ITに詳しい同僚とともに手作業を見直し、Copilotなどを使って業務の範囲を広げていました。
相談できる人がいるだけでは足りません。その人が休んだ日にも仕事が止まらないように、複数の人と方法を共有する必要があると分かりました。
講座で共有された経験を要約
ここで見えてきたのは、視覚障害者の働き方は「本人がAIを使えるか」だけでは決まらないということです。相談しやすい職場か。仕事の決定権と支援の範囲が整理されているか。特定の支援者に依存していないか。こうした条件も欠かせません。
半年後、受講生にどのような変化があったのか
最終回では、一人ずつ半年間を振り返りました。全員が同じ成果へ進んだわけではありません。転職、現職での改善、新しい仕事づくり、専門性の深掘りなど、それぞれの次の一歩がありました。
自分が本当にしたい仕事に気づいた
ある受講生は、AIとの対話や自己分析を通じて、「人と接することが好き」という自分の軸を再確認しました。現職でキャリアが停滞している感覚を言葉にし、強みを活かせる仕事への転職を決めました。
大切なのは、AIに転職を決めてもらったのではないことです。AIとの対話を、考えを整理する鏡として使いました。講座で他の受講生の経験も聞き、自分が変えたいものを明確にしました。
職場で使うAIを、自分でつくり始めた
別の受講生は、講座で学んだ考え方を職場へ持ち帰り、法務関連の情報を扱うAIエージェントを作り始めました。定期的に講座へ参加することが、学びを続けるきっかけになったと話しています。
一度のセミナーでは、便利な機能を知って終わることがあります。半年間の講座では、試した結果を次の回へ持ち寄れます。うまくいかなければ、原因を一緒に考えます。この繰り返しが、知識を職場で使える力へ変えました。
自分の経験に、新しい名前を付けられた
講座開始時には、AIへどう指示すればよいか分からなかった受講生もいました。存在しない操作方法をAIから案内され、混乱した経験もあります。そこで、質問を小さく分け、目的と条件を伝え、出力を確認する方法を学びました。
対話を重ねる中で、その人は自分の読書経験や人へ伝える力を整理し、新しい肩書を見つけました。その後、関連する仕事の相談が増え、With Blindの講師としても活動を始めました。
管理職だけが、成長の道ではないと分かった
自己分析を通じて、マネージャーよりも専門職として技術を深める方が自分に合うと確認した受講生もいます。昇進の形を一つに決めず、自分が力を発揮できる方向を選びました。
これまでの経験を、次の仕事に変えられると気づいた
複数の仕事や支援現場を経験してきた受講生は、パソコンやNVDAの操作を人へ教える力に注目しました。NVDAは、Windowsで利用できる無料の画面読み上げソフトです。これまで「自分にとって当たり前」と思っていた操作経験が、別の人にとって価値のある支援になる可能性を見つけました。
評価が分からない
分けて考える
小さく試す
専門性、仕事づくり
講座から得られた5つの学び
1.AIは「答えを決める人」ではなく、整理を助ける相手
AIは、大量の情報を集め、短くまとめ、比較することが得意です。考えがまとまらないときに質問を返してもらうこともできます。しかし、事実と違う内容を自信ありげに答えることがあります。これを「ハルシネーション」と呼びます。
そのため、履歴書、法務、行政手続きなど、間違いの影響が大きい仕事では確認が必要です。AIが作った文章をそのまま提出せず、元の資料と照らし合わせます。
2.文章の中身と、見た目の品質は別に確認する
スクリーンリーダーで文章を確認できても、余白、写真、罫線、改ページの状態は分からない場合があります。これは本人の能力の問題ではなく、情報の受け取り方の違いです。
テンプレート、PDF、AIによる画像説明、第三者確認などを組み合わせます。重要なのは、「最後は誰かに全部やってもらう」ではなく、確認工程をあらかじめ仕事の手順へ組み込むことです。
3.相談する力と、相談できる職場の両方が必要
本人が伝え方を学ぶことは役立ちます。しかし、どれほど上手に伝えても、周囲に余裕がなく、相談を受け止める仕組みがなければ仕事は広がりません。
定期面談を設定する。相談先を複数にする。支援者が不在でも使える手順を残す。これらは視覚障害者だけでなく、すべての社員が働きやすい職場につながります。
4.継続することで、失敗を学びに変えられる
履歴書のレイアウトが崩れたとき、一回限りの講座なら「うまくできなかった」で終わるかもしれません。継続講座なら、なぜ崩れたかを確かめ、PDF化や余白設定を試し、次の課題へ反映できます。
半年という期間は、受講生の生活や仕事に変化が起きる時間でもあります。講座で聞いた話が、数週間後に職場の出来事と結び付くことがあります。その経験を次の回で言葉にすることで、本人だけでなく他の受講生の学びにもなりました。
5.目標は「AIに詳しい人」になることではない
本講座の目的は、すべての受講生が高度なAIエージェントを作ることではありません。自分の仕事やキャリアについて、選べる方法を増やすことです。
文章を一人で下書きできる。上司へ相談する内容を整理できる。得意なことに名前を付けられる。転職するか、現職で役割を広げるかを考えられる。こうした変化も、大切な成果です。
With Blindの講座の特徴
視覚障害当事者の実際の操作環境から考える
「そのアプリは使える」と紹介するだけではありません。キーボードだけで操作できるか。スクリーンリーダーがボタン名を読み上げるか。スマートフォンだけでも課題に取り組めるか。受講生の環境で確かめます。
受講生からは、スクリーンリーダーを使った具体的なデモをもっと見たいという要望もありました。これは今後の講座改善で重視すべき点です。説明と対話に加え、操作音を含む実演、手順書、復習用教材を組み合わせる必要があります。
成功例だけでなく、途中の試行錯誤を共有する
完成した成果物だけを見ると、そこへ至るまでのつまずきが分かりません。With Blindの講座では、AIへ何と聞いたか、どこで操作が止まったか、誰に確認してもらったかも共有します。
この方法なら、自分と同じ環境で起きやすい失敗を先に知ることができます。「できない自分」ではなく、「まだ手順が整っていない」と捉え直せます。
仕事、技術、対話を切り離さない
便利なツールがあっても、勤務先で利用が許可されなければ使えません。本人が操作できても、上司が成果を評価できなければ役割は広がりません。
そこで講座では、AIやICTの操作とともに、仕事の目的、成果の説明、相談方法、職場の協力体制を扱いました。技術を「知っている」から、仕事で「使える」へ進めるためです。
当事者同士を、比較ではなく資源としてつなぐ
同じ視覚障害があっても、働き方は一人ずつ違います。講座では、誰が一番できるかを競いません。他の人の方法を、自分の選択肢として持ち帰ります。
ある人の転職経験は、今の職場で悩む人の参考になります。別の人のNVDA操作は、初めてパソコンを学ぶ人の助けになります。経験を安心して共有できること自体が、講座の価値です。
視覚障害に特化した講座を行う意義
視覚障害者向けの講座を開くことは、参加者を一般の学びから分けるためではありません。一般の講座では見落とされやすい条件を、最初から学習設計に入れるためです。
- 教材を読み上げ可能な形式で渡す
- 画面共有の内容を言葉でも説明する
- マウス以外の操作方法を確認する
- 見た目の確認が必要な課題では、確認方法も教える
- 障害に関する説明を毎回本人だけに求めない
- 視覚障害と仕事の両方を知る人へ相談できる
こうした条件があると、受講生は「参加できるか」の心配だけで力を使わずに済みます。本来学びたかった仕事やキャリアの課題に集中できます。
また、ここで見つかった方法は、視覚障害者だけに役立つものではありません。読みやすい文書、明確な手順、複数の相談先、音声でも分かる説明は、新入社員、外国人社員、在宅勤務者などにも役立ちます。
この講座は、どのような人の役に立つのか
働く視覚障害者
仕事が少ない、評価が分からない、AIを実務で試したい、自分の強みを言葉にしたい方。
就職・転職を考える方
履歴書や面接準備だけでなく、自分に必要な環境と仕事の方法を整理したい方。
上司・人事担当者
視覚障害のある社員へ何を任せるか、どのように対話し評価するかを考えたい方。
支援者・講師
当事者の実務に結び付くICT支援、キャリア支援、教材設計を学びたい方。
半年間を終えて。With Blindが考える次の一手
今回の講座では、転職を決めた人、新しい仕事の可能性を見つけた人、職場でAI活用を始めた人がいました。一方で、途中で参加が難しくなった人もいます。具体的な操作実演を増やしてほしいという声もありました。
成果だけを見るのではなく、参加し続けられなかった理由や、学びにくかった場面も検証する必要があります。夜間のオンライン開催が合わない人もいます。端末、利用するAIサービス、スクリーンリーダーの違いによって、同じ説明を再現できないこともあります。
次回は、次のような改善を検討します。
いろいろな団体・講師と一緒に、次の一手をつくりたい
With Blindだけで、働く視覚障害者のすべての課題に答えることはできません。ICTに詳しい当事者、企業の人事担当者、就労支援機関、眼科医療や福祉の専門職、キャリア支援者、AIやアクセシビリティの研究者など、それぞれが異なる知見を持っています。
今後は、講師を依頼して一度話してもらうだけでなく、教材や課題を一緒につくる協力を広げたいと考えています。例えば、企業から実務に近い課題を提供していただき、当事者と専門家がアクセシブルな進め方を検証することもできます。支援団体と連携し、講座後の就職・定着支援へつなぐこともできます。
AIの進化は速く、半年後には使える機能が大きく変わります。だからこそ、特定のアプリの操作だけを教えるのでは足りません。新しい道具が出たとき、自分の仕事へどう取り入れるか。安全性とアクセシビリティをどう確かめるか。周囲へ何を相談するか。その考え方を共有し続けたいと思います。
連携を検討したいテーマ
- スクリーンリーダーによる生成AI・AIエージェントの実演
- 視覚障害者が実務で使えるWord・Excel・クラウドサービス
- 企業内での業務設計、合理的配慮、評価とキャリア形成
- 就職・転職時に使えるアクセシブルな応募書類と面接準備
- 法務、税務、教育、相談支援などの職種別AI活用
- 講座で得た成果を測り、改善へつなげる方法
読んだ後にできる、最初の一歩
この記事を読んで終わりにせず、次の問いから一つ選んで書き出してみてください。
- 今の仕事で、時間がかかっている作業は何ですか
- その作業は「情報を探す」「考える」「入力する」「見た目を確認する」のどこで止まりますか
- AIに任せられる工程と、人に確認したい工程はどこですか
- これまで人から感謝された仕事は何ですか
- 職場で15分相談するとしたら、誰に何を伝えますか
- 1か月以内に試せる、小さな課題は何ですか
答えがまとまらなくても構いません。困りごとを小さく分けることが、次の一歩です。
講座・連携についてWith Blindへ相談する
働き方やAI活用を学びたい視覚障害当事者の方、社内研修を検討する企業の方、講師・教材・実践課題で協力いただける団体の方からのご相談をお待ちしています。
まとめ|AIと対話し、人とも対話する
半年間の講座で分かったのは、AIが視覚障害者の仕事を一度に変えるわけではないということです。それでも、考えを整理し、文章を作り、情報へアクセスし、自分の可能性を言葉にする力を、AIは確かに広げてくれます。
同時に、文書の見た目を確認する方法、相談できる職場、支援を特定の人へ集中させない仕組みが必要です。AIとの対話だけでなく、上司、同僚、支援者、仲間との対話が欠かせません。
受講生が半年後に見つけた答えは、一つではありませんでした。転職する。今の職場でAIを使う。専門性を深める。経験を人へ教える。新しい肩書で仕事をつくる。それぞれが、自分で選んだ次の一歩です。
With Blindは、視覚障害のある人が「与えられた仕事をこなす」だけでなく、自分の役割をつくり、評価され、働き続けられる学びを増やしていきます。そのために、当事者、企業、支援機関、専門家、講師の皆様と力を合わせ、次の講座と実践の場をつくっていきたいと考えています。
AI学習を仕事の成果につなげる振り返り
ツールの機能を覚えるだけでなく、自分の業務で何が変わったかを記録すると、学びを職場へ説明しやすくなります。
- 学習前の作業時間、難しかった工程、必要な支援を記録する
- AIで変えたい作業を一つに絞り、同じ条件で試す
- 時間短縮だけでなく、品質、疲労、説明しやすさも評価する
- 誤り、機密情報、著作権、アクセシビリティの問題を記録する
- 本人・上司・同僚で成果と限界を共有し、次の役割や研修を決める
大切なポイント:AIを使える人だけに負担を集中させず、組織のルール、相談先、研修、検証手順を整えることが継続的な活用につながります。

