「視覚障害のある家族や友人と、何をして遊べばいいのだろう」
そう考えた瞬間、遊びが少し難しい宿題のように感じられるかもしれません。でも、答えは特別なイベントの中だけにあるわけではありません。カードに印を付ける。盤面を言葉で実況する。音を合図にする。全員が同じ条件になるよう、目を閉じて遊ぶ。たった一つルールを変えるだけで、いつものテーブルが新しい遊び場になります。
With Blindはこれまで、点字を付けたモノポリーやカタンを実際に遊び、うまくいったことも、盤面の全体像がつかみにくかったことも記事にしてきました。大切なのは「視覚障害者でも参加できた」で終わらず、全員が本気で勝ちたい、もう一回やりたいと思えることです。
この記事では、視覚障害のある本人、家族、友人、支援者が一緒に楽しめる12の遊びと、場を面白くする工夫を紹介します。
- まず覚えておきたいのは「見えない人向け」より「全員が楽しい」
- 視覚障害があっても一緒に遊べるゲーム12選
- 1. ワードウルフ——声だけで始められる心理戦
- 2. 古今東西ゲーム——移動中にもできる言葉遊び
- 3. 音当てクイズ——家の中が収録スタジオになる
- 4. 触って当てる箱——触覚と言葉の表現力で勝負
- 5. 音のかくれんぼ——小さな空間で安全に
- 6. 点字・触覚マーク付きトランプ
- 7. モノポリー——お金と交渉は言葉で盛り上がる
- 8. カタン——難しさもみんなで攻略する
- 9. 協力型の謎解き——得意を持ち寄る
- 10. 料理をゲームにする——音、香り、手触りのチーム戦
- 11. 音声ガイド付き映画で“実況しない”鑑賞会
- 12. わが家のオリジナルゲームを作る
- うまくいく進行の5つのコツ
- まとめ——「一緒に遊べる?」を「次は何して遊ぶ?」へ
- 参考にした情報
まず覚えておきたいのは「見えない人向け」より「全員が楽しい」
遊びの準備をするとき、つい「見えない人には何ができるか」と考えてしまいます。けれど、その人の見え方、点字を読むか、音声を使うか、手で全体像を確かめたいかは一人ひとり違います。最初に聞きたいのは、配慮の一覧ではなく「どんな遊びが好き?」「説明はどんな方法が分かりやすい?」という二つの質問です。
弱視の人には、照明、文字の大きさ、コントラスト、カードを置く位置が大切な場合があります。全盲の人には、触って区別できる印、盤面を固定する枠、ゲームの状況を言葉にすることが役立ちます。一方で、本人が必要としていない手助けを先回りすると、テンポや自分で選ぶ楽しさを奪うこともあります。
「困ったら言ってね」で待つだけでも、「全部こちらでやる」でもありません。始める前に一緒に試し、遊びながら変える。それがいちばん実用的です。
視覚障害があっても一緒に遊べるゲーム12選
- 1. ワードウルフ
- 2. 古今東西ゲーム
- 3. 音当てクイズ
- 4. 触って当てる箱
- 5. 音のかくれんぼ
- 6. 点字・触覚マーク付きトランプ
- 7. モノポリー
- 8. カタン
- 9. 協力型の謎解き
- 10. 料理をゲームにする
- 11. 音声ガイド付き映画で“実況しない”鑑賞会
- 12. わが家のオリジナルゲームを作る
1. ワードウルフ——声だけで始められる心理戦
全員に似た言葉を配り、少数派の言葉を持つ人を会話から探すゲームです。アプリの画面が読みにくい場合は、進行役が個別に言葉を伝えたり、テキストメッセージをスクリーンリーダーで確認できる形にしたりします。
面白さの中心は表情ではなく、言葉選びと間です。「それ、朝にも使う?」「旅行に持っていく?」と質問が重なるほど、見える・見えないとは別のところで駆け引きが生まれます。
準備のポイント
参加者全員が自分のお題を確認できる方法を用意します。スマートフォンを使う場合は、ゲーム開始前にVoiceOverなどの読み上げ機能でお題、投票ボタン、残り時間を確認できるか試します。操作しにくい場合は、進行役が個別メッセージやイヤホン越しにお題を伝えても構いません。
With Blindの実践記事では、短い発言を二周すること、お題を言い当てるほど直接的なヒントを避けること、声色や言葉の矛盾も推理材料になることが紹介されています。表情が見えなくても、会話そのものがゲームの中心なので、オンラインでも遊びやすい題材です。
盛り上げ方
発言順を毎回名前で伝え、投票前に「気になった一言」を全員が一つずつ挙げます。初参加者がいるときは制限時間を長めにし、アプリ操作で置いていかれる人がいないことを確認してから始めましょう。
2. 古今東西ゲーム——移動中にもできる言葉遊び
「青いもの」「駅にあるもの」「元気が出る曲」など、お題に合う言葉を順番に答えます。手拍子やスマートスピーカーのタイマーを使えば、テンポが出ます。
難易度を上げるなら「一度出た答えを言ったら負け」「答える前に前の人の答えを復唱する」など、記憶の要素を加えます。家族の思い出をお題にすると、昔話が始まるのも楽しいところです。
準備のポイント
回答順を円順ではなく名前で管理し、「次は由奈さん」のように毎回伝えます。テンポを作る拍手は、聞き取りや発話の速さに合わせて変えられます。急かされると考えにくい人がいる場合は、タイマーを使わず、同じ答えを言わないことだけをルールにしても十分楽しめます。
お題の作り方
「赤いもの」のように視覚だけに寄せず、「夏にしたいこと」「元気が出る食べ物」「駅で聞こえる音」など、経験や五感から答えられるテーマを混ぜます。家族なら旅行先、学校なら授業、職場なら業界用語をお題にすると、その場ならではの会話が広がります。
3. 音当てクイズ——家の中が収録スタジオになる
鍵を置く音、炭酸飲料を開ける音、紙を破る音、調味料を振る音。身近な音を録音し、何の音かを当てます。音の距離や素材まで当てる上級編もできます。
「聞こえる人が有利」ではなく、普段は見過ごしていた音に全員で集中するゲームです。子どもが出題者になると、家の中から意外な音を探す宝探しにもなります。
準備のポイント
録音は一つ5〜10秒程度にし、音量差を小さく整えます。いきなり大きな音を再生せず、参加者に再生開始を伝えてから流してください。身近な生活音のほか、駅、雨、スポーツ、楽器などテーマ別のラウンドにすると難易度を調整できます。
遊び方の発展
正解だけでなく「どこで鳴っている音か」「何の素材か」「録音した人は何をしていたか」まで想像して得点にします。録音係、再生係、得点係を交代すれば、視覚障害のある本人も出題側としてゲームを動かせます。
4. 触って当てる箱——触覚と言葉の表現力で勝負
箱や布袋の中に安全な物を入れ、手触りだけで当てます。答えをすぐ言わず、「冷たい」「角が三つある」「少し弾む」など特徴を三つ説明してから回答するルールにすると、言葉の面白さが増します。
食品を使う場合はアレルギーを確認し、尖った物や割れ物は避けてください。勝敗だけでなく「いちばん伝わる説明」を選ぶ賞を作るのもおすすめです。
準備のポイント
触る前に、食品、植物、洗剤、ラテックスなどのアレルギーを確認します。中身は尖っていない、熱くない、液体が漏れない物を選び、手を入れる位置と物の置き場所を最初に説明します。触ることが苦手な人には、布越しに触れる、音や香りのヒントを加える選択肢も用意します。
言葉を楽しむルール
答えを当てる速さだけで競うと、経験の差が出やすくなります。「三つの特徴を分かりやすく説明できたら1点」「他の人がその説明で正解できたら1点」とすると、観察と言語化がゲームになります。
5. 音のかくれんぼ——小さな空間で安全に
音の鳴る玩具やスマートフォンを室内に隠し、音を頼りに探します。転倒しないよう床の物を片付け、探索範囲を明確にします。人が声を出しながら隠れる方法なら、声の高さや鳴らす間隔を工夫できます。
大人同士なら、制限時間とヒント回数を設けると意外に白熱します。安全確認役を一人置き、腕を引っ張らず、危険が近いときだけ具体的に声をかけます。
安全の準備
遊ぶ範囲を一部屋などに限定し、床のコード、鞄、椅子、低い机を片付けます。音源を階段、浴室、ベランダ、頭より高い位置には置かず、探索中は走らないことを共通ルールにします。音量は場所が分かる程度にし、耳元で突然鳴らさないでください。
難易度の調整
最初は連続音、慣れたら5秒ごとの音、上級編では二つの音源から指定された方だけを探します。安全確認役は方向をすべて教えず、「一歩先に椅子があります」のように危険情報だけを具体的に伝えると、本人が自分で探す楽しさを保てます。
6. 点字・触覚マーク付きトランプ
市販の点字付きトランプを使うほか、カードの角に小さな触覚シールを貼る方法もあります。数字やマークをすべて触覚化するのが難しければ、まずはUNOの色を形で分ける、神経衰弱のペアに同じ素材を貼るなど、ゲームを絞って工夫します。
カードを扇状に持ちにくい場合は、カードスタンドを使うと両手が自由になります。捨て札の内容は毎回読み上げ、誰の番かを名前で伝えます。
点字トランプを選ぶ前に
With Blindの説明記事でも紹介しているように、視覚障害のある人全員が点字を読めるわけではありません。本人が点字を使わない場合は、大きな文字・高コントラストのカード、触覚シール、カード内容を確認できる支援アプリ、読み上げ役など、使いやすい方法を一緒に選びます。
大富豪での実践例
手札を数字順に並べる時間を取る、場に出したカードの数字とマークを毎回声に出す、誰が上がったかと現在の順番を共有する、といった工夫が有効です。本人が配りたい場合は、シャッフルや配札も任せます。時間がかかっても役割を奪わず、必要なときだけ手伝うことが大切です。
点字付きカードは通常のカードより厚くなることがあります。枚数が多く持ちにくい場合は、カードスタンドや複数のトレーに分けると選びやすくなります。
7. モノポリー——お金と交渉は言葉で盛り上がる
With Blindでは、モノポリーのカードや紙幣に点字を付けて実際に遊びました。盤面を時計の文字盤のように説明したり、コマの現在地を毎ターン伝えたりすると状況を追いやすくなります。
銀行係がすべてを管理するより、紙幣を額ごとにトレーへ分け、本人が自分で支払える状態にする方がゲームの主導権を保てます。交渉の場面では、沈黙も作戦の一部。説明しすぎないことも大切です。
盤面の共有
開始前に四辺の土地、駅、公共施設、刑務所など大きな区分を触って確認し、進行中は「現在地」「サイコロの目」「移動後のマス」「他のコマの位置」を順番に伝えます。盤面やカードを勝手に動かさず、動かした場合は必ず知らせます。
本人が管理できる仕組み
紙幣を金額別のトレーに分け、不動産カードを購入順または色別に並べます。銀行係が代わりに計算し続けるのではなく、必要に応じて金額を読み上げ、本人が支払いと交渉を判断できる状態を作ります。交渉内容は全員に聞こえる声で行い、盤面の情報格差を駆け引きに利用しないことも共通ルールにします。
8. カタン——難しさもみんなで攻略する
カタンは盤面が毎回変わり、資源や道の位置関係が重要です。With Blindの過去の実践でも、点字を付けるだけでは全体像がつかみにくいという課題が見つかりました。
そこで、盤面の外周を固定する枠、道路がずれにくい面ファスナー、地形ごとに違う素材、座標を付けたマップを試してみます。各ターンの最後に「今の盤面を30秒で実況」する係を交代制にすれば、晴眼者も説明力が問われます。完成品を待つのではなく、遊びながら改造すること自体をゲームにしてしまいましょう。
まず小さく試す
通常ルールを一度に完全再現するのではなく、地形を3種類に減らす、勝利点を短く設定するなど、練習ラウンドから始めます。地形タイルに違う素材を貼り、数字チップには点字や立体シールを付け、道路と開拓地がずれないよう面ファスナーや磁石を使う方法があります。
実況の共通書式
「誰が」「どの地形の間に」「何を置いたか」を毎ターン同じ順序で伝えます。資源カードは本人だけが内容を確認できる方法を用意し、秘密情報まで読み上げないよう注意します。盤面説明係を交代制にすると、全員が分かりやすい説明を考えるゲームにもなります。
9. 協力型の謎解き——得意を持ち寄る
言葉の暗号、音声問題、触覚パズル、一般知識を組み合わせ、チームで制限時間内のクリアを目指します。画像問題には最初からテキスト説明を用意し、説明が答えを漏らさないか確認します。
視覚情報を一人が抱え込まず、「何が見えるか」を言葉にして共有する過程が面白さになります。企業研修や学校行事にも応用でき、役割を固定せず途中で交代すると、チームの新しい強みが見えてきます。
問題を複数形式で用意
画像問題には文字による説明、文字問題には読み上げ可能なデータ、形の問題には触察物、映像問題には音声情報を用意します。ただし画像説明が答えそのものにならないよう、制作後に別の人がテストします。
役割を固定しない
読み上げ、記録、暗号解読、時間管理、触覚パズルなどを途中で交代します。「見える人が画像を担当し、見えない人は待つ」という分担にせず、視覚情報もまず言葉でチーム全体へ共有してから全員で推理します。
10. 料理をゲームにする——音、香り、手触りのチーム戦
餃子を包む速さではなく形の面白さを競う、スパイスを香りで当てる、焼ける音を聞いて仕上がりを予想するなど、料理は五感のゲームになります。
包丁や火を使う場面は、本人の経験と希望を確認し、勝手に取り上げないこと。作業台の配置を最初に一緒に確認し、熱い物の位置を動かしたら必ず伝えます。完成後は味だけでなく「今日いちばん良かった連携」を発表します。
安全と主体性
調理台、包丁、火、熱い鍋、食材の配置を開始前に一緒に確認します。位置を変えたときは必ず伝え、本人が慣れている作業を「危ないから」と一方的に取り上げません。必要な支援は、手を出す前に本人へ確認します。
競い方を工夫
速さだけで競うと安全確認が後回しになりやすいため、香り当て、食感の表現、盛り付けの説明、チーム連携など複数の賞を用意します。アレルギー、食事制限、苦手な香りを事前に確認し、味見用のスプーンを共用しないなど衛生面も揃えます。
11. 音声ガイド付き映画で“実況しない”鑑賞会
音声ガイドがある作品を選び、映画館や配信で楽しみます。同行者がずっと説明するより、公式の音声ガイドを使う方が作品のテンポを保ちやすい場合があります。鑑賞前に登場人物だけ確認し、鑑賞中に追加説明が必要かを相談しておきます。
終わった後は「どの音が印象に残った?」「人物をどんな姿で想像した?」と話してみてください。同じ作品から違う景色が立ち上がります。
作品の探し方
配給会社や映画館の公式サイトで「バリアフリー日本語音声ガイド」「HELLO! MOVIE」「UDCast」などの表記を確認します。音声ガイドは、人物の動作、情景、字幕やテロップなど、映像だけで示される情報を本編の音の合間に伝える仕組みです。対応作品、アプリ、端末、イヤホン、事前ダウンロードの要否は鑑賞前に確認してください。
鑑賞会の準備
スマートフォンを十分に充電し、機内モードや通知設定、イヤホンの音量を上映前に確認します。同行者による補足が必要な場合は、「人物の登場だけ」「画面の文字だけ」など説明してほしい範囲を相談し、台詞や効果音を妨げないようにします。
12. わが家のオリジナルゲームを作る
最後は、遊ぶ側から作る側へ。家族の声を録音したカルタ、触って分かる地元マップ、好きな曲のイントロクイズなど、身近な題材なら作る時間も思い出になります。
オンラインスクールWith Blindでは、点字、ICT、プログラミング、音楽など、一人ひとりの見え方や学び方に合わせた講座があります。遊びのアイデアをプログラムや教材にすることも、「学びたい」の立派な入口です。
作り方の手順
最初に「全員が同じ情報を得られるか」「自分で選べるか」「役割があるか」の三点を確認します。家族の声を録音したカルタなら、読み札を音声、取り札を触覚マークにするなど、音と触覚を組み合わせられます。
完成後にテスト
作った本人とは別の人に説明書だけで遊んでもらい、分かりにくい手順、触って区別できない部品、説明しすぎて答えが分かる箇所を見つけます。遊んだ後に「楽しかった点」と「一つ変える点」を全員から聞き、次回版へ更新します。
うまくいく進行の5つのコツ
- 誰の番か、名前で伝える。
- 「そこ」「あれ」ではなく、位置や形を具体的に言う。
- 物の位置を変えたら一言伝える。
- 手を取って動かす前に、必要かを聞く。
- 一回で完成を目指さず、終わった後にルールを一つだけ改善する。
声かけは実況中継のように全部を説明することではありません。勝敗に必要な情報を公平に共有し、本人が判断できる余白を残します。
まとめ——「一緒に遊べる?」を「次は何して遊ぶ?」へ
視覚障害のある人と遊ぶために必要なのは、完璧な専用品より、目の前の人に聞いて一緒に変える姿勢です。うまくいかなかった工夫も、次のルールを考える材料になります。
With Blindが大切にしてきた「見えても、見えなくても」は、同じ方法を強いることではありません。違う方法を持ち寄りながら、同じ場で本気になれることです。
今週末、まず一つ選ぶなら、道具のいらない音当てクイズや古今東西ゲームから。面白かった工夫は、ぜひ家族や友人にもシェアしてください。誰かの「うちでもやってみよう」が、次の遊び場を増やします。
参考にした情報
- With Blind「ボードゲーム『カタン』に点字をつけて遊んでみた!」
- With Blind「ボードゲーム『モノポリー』に点字をつけて遊んでみた!」
- オンラインスクールWith Blind「初めての方へ」
- With Blind「見えない人も使える『点字トランプ』で遊んでみた①〜説明編〜」
- With Blind「見えない人も使える『点字トランプ』で遊んでみた②〜大富豪編〜」
- With Blind「見えない人と一緒に遊ぶ〜ジェンガ編〜」
- With Blind「視覚障害者も一緒に遊べるアプリ!ワードウルフの遊び方②」
- ソニー・ピクチャーズ「バリアフリー日本語音声ガイドとバリアフリー日本語字幕」
- エヴィクサー「HELLO! MOVIE」
※見え方や必要な配慮は人によって異なります。安全に関わる場面では、本人と相談し、環境に合わせて方法を調整してください。


